自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

2020-01-01から1年間の記事一覧

【2587冊目】頭木弘樹『食べることと出すこと』

食べることと出すこと (シリーズ ケアをひらく)作者:頭木 弘樹医学書院Amazon この「シリーズ ケアをひらく」は、私の大好きなシリーズだ。その大きな理由として、どの本を読んでも、今まで当たり前だと思ってきたことが、まったく違うように見える、という…

【2586冊目】こうの史代『夕凪の街 桜の国』

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)作者:こうの 史代双葉社Amazon 何度読み返しても、そのたびに発見があり、心が揺さぶられます。すばらしい一冊です。原爆が描かれた作品を一つ選ぶとしたら、どんな文学よりも映画よりも、私はこのマンガを推したいと…

【2585冊目】米澤穂信『氷菓』

氷菓 「古典部」シリーズ (角川文庫)作者:米澤 穂信KADOKAWAAmazon 全体的には、小説というよりアニメのノベライズ、といった印象。ポップな展開、わかりやすくキャラの立った登場人物、そしてシンプルだけどそこそこ意外性のある謎解き。たいへんに読みやす…

【2584冊目】ジェームズ・キャメロン他『SF映画術』

SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座作者:ジェームズ・キャメロンDU BOOKSAmazon SF好き、映画好きにはたまらん一冊だ。なにしろジェームズ・キャメロンが、スピルバーグやルーカスからノーランまで、名だた…

【2583冊目】辻村深月『盲目的な恋と友情』

盲目的な恋と友情(新潮文庫)作者:辻村深月新潮社Amazon いや〜、びっくりだった。辻村深月って、こんな「怖い」小説を書く人だったのか。この人の本は数冊しか読んでいないので、あまりえらそうなことは言えないが、今まで読んだことのある作品とは、明ら…

【2582冊目】ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』

黄色い部屋の謎【平岡敦訳】 (創元推理文庫)作者:ガストン・ルルー東京創元社Amazon 小学校高学年あたりで一度読んだきりだった。たぶんポプラ社あたりの児童向け翻案モノだと思う。とにかく怖かった記憶しかない。「黄色い部屋」というシチュエーション。羊…

【2581冊目】つげ義春『ねじ式』

ねじ式 (1) (小学館文庫)作者:つげ 義春小学館Amazon つげワールド、としか呼びようのない、独特の味わいの一冊です。「まさかこんな所にメメクラゲがいるとは思わなかった」表題作の「ねじ式」は、こんな奇妙なセリフで始まります。絵も、海岸の上に飛行機…

【2580冊目】オーウェン・ジョーンズ『チャヴ』

チャヴ 弱者を敵視する社会作者:オーウェン・ジョーンズ,Owen Jones海と月社Amazon タイトルの「チャヴ」とは、イギリスで労働者階級を指す「侮蔑語」だ。多くは公営住宅に住み、低賃金の仕事か生活保護で暮らす「急激に増加する粗野な下流階級」。これに相…

【2579冊目】宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書) 作者:宮口幸治 新潮社 Amazon 児童精神科医である著者は、勤めていた病院を辞め、医療少年院に赴任します。 医療少年院とは、主に発達障害や知的障害のある非行少年が収容される「少年院版特別支援学校」。 そこで…

【本以外】角川武蔵野ミュージアムに行ってきました

昨日オープンした「角川武蔵野ミュージアム」に行ってきました。東所沢駅から10分程歩くと、突然あらわれる偉容に度肝を抜かれます。隈研吾デザインの建物は、巨大な岩石が空から降ってきたかのよう。敷地内にはナゾの鳥居とのぼり旗。近寄ると・・・なんじ…

【2578冊目】マーガレット・アトウッド『侍女の物語』

侍女の物語作者:マーガレット アトウッド早川書房Amazon キリスト教原理主義者のクーデターが起きた「もうひとつのアメリカ」が舞台。ギレアデと名付けられたその国では、すべての女性が財産を没収され、仕事を奪われ、別の役割をあてがわれています。本書の…

【2577冊目】角幡唯介『空白の五マイル』

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫) 作者:角幡 唯介 集英社 Amazon 決して本に書いてないことがあります。誰も行ったことのない場所のこと、です。チベットのツアンポー川は、まさにそういう場所でした。 幾多の探検家が…

【2576冊目】『短編画廊』

短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション) 作者:ローレンス・ブロック,スティーヴン・キング,ジェフリー・ディーヴァー,マイクル・コナリー,リー・チャイルド,ジョー・R・ランズデール,ジョイス・キャロル・オーツ,ロバート・オレ…

【2575冊目】ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』

海底二万里 上 (角川文庫) 作者:ジュール・ヴェルヌ,渋谷 豊 発売日: 2016/07/23 メディア: Kindle版 海底二万里 下 (角川文庫) 作者:ジュール・ヴェルヌ,渋谷 豊 発売日: 2016/07/23 メディア: Kindle版 小学生の頃、児童書のダイジェスト版で読んで以来の…

【2574冊目】児玉真美『私たちはふつうに老いることができない』

私たちはふつうに老いることができない: 高齢化する障害者家族 作者:児玉 真美 発売日: 2020/05/25 メディア: Kindle版 このタイトルが「刺さる」人は、おそらく障害者の親かその関係者だろう。障害当事者にさえなかなか光が当たらない中、「障害者の親」の…

【2573冊目】伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書) 作者:伊藤 亜紗 発売日: 2015/05/15 メディア: Kindle版 「目が見えない」とはどういうことか。目が見える人の感覚要素から「視覚」を引いただけ、ではない。それは「目が見える人とは別の世界」を生き…

【2572冊目】星新一『ボッコちゃん』

ボッコちゃん(新潮文庫) 作者:星 新一 発売日: 2013/03/01 メディア: Kindle版 こないだnoteにもアップしたが、久しぶりに読み返したので、コチラにも。中身はほぼ一緒です。 読んだのは中学生のころだっただろうか。当時はほとんどの本を図書館で借りてい…

【2571冊目】吉田伸夫『時間はどこから来て、なぜ流れるのか?』

時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」 (ブルーバックス) 作者:吉田 伸夫 発売日: 2020/01/15 メディア: 新書 映画『TENET』があまりにワケわからなかったので、時間論の本でも読めば少しは理解が進むかと思っ…

【2570冊目】借金玉『発達障害サバイバルガイド』

発達障害サバイバルガイド――「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47 作者:借金玉 発売日: 2020/07/30 メディア: Kindle版 サバイバルガイドというと、なんだかジャングルにでも行くみたいだが、本書の舞台は普段の仕事や生活そのもの。だ…

【2569冊目】サマセット・モーム『雨・赤毛 他一篇』

雨/赤毛―他一編 (岩波文庫 赤 254-1) 作者:サマセット・モーム メディア: 文庫 こないだ『月と六ペンス』を読んでモームが気になったので、だいぶ前から持っているやつを引っ張り出してきた。1962年初版の岩波文庫版だが、どうやらすでに絶版らしい。「土人…

【2568冊目】山内一也『ウイルスの世紀』

ウイルスの世紀――なぜ繰り返し出現するのか 作者:山内一也 発売日: 2020/08/28 メディア: Kindle版 数十年にわたりエマージングウイルスを研究してきた著者による「集大成」の一冊。そこに新型コロナウイルスのパンデミックが重なったことは、思えばなんとい…

【2567冊目】吉野裕子『ダルマの民俗学』

ダルマの民俗学―陰陽五行から解く (岩波新書) 作者:吉野 裕子 発売日: 1995/02/20 メディア: 新書 ダルマといえば知らない人はいない、赤くてギョロ目のあの物体だ。そのモデルが禅の始祖、達磨大師であることはよく知られているが、では、なぜかつて実在し…

【2566冊目】佐藤優『人たらしの流儀』

人たらしの流儀 (PHP文庫) 作者:佐藤 優 発売日: 2013/03/05 メディア: 文庫 タイトルはキャッチー、というか露悪的だが、中身は人間関係構築のための具体的なノウハウ。というか、われわれが人間関係を築きたいと思う時って、たいていホンネでは「人たらし…

【2564・2565冊目】劉慈欣『三体』『三体2 黒暗森林』

三体 作者:劉 慈欣 発売日: 2019/07/04 メディア: Kindle版 三体Ⅱ 黒暗森林(上) 作者:劉 慈欣 発売日: 2020/06/18 メディア: Kindle版 三体Ⅱ 黒暗森林(下) 作者:劉 慈欣 発売日: 2020/06/18 メディア: Kindle版 久しぶりにSFを読んだら、とんでもない…

【2563冊目】デイヴィッド・ベインブリッジ『中年の新たなる物語』

中年の新たなる物語 (動物学、医学、進化学からのアプローチ) 作者:デイヴィッド ベインブリッジ 発売日: 2014/11/22 メディア: 単行本 中年って何だろう。 私やあなたは「中年」だろうか? 少なくとも、こんなタイトルの本を手に取って読んでしまった私は、…

【2562冊目】中島岳志『親鸞と日本主義』

親鸞と日本主義 (新潮選書) 作者:中島岳志 発売日: 2017/08/25 メディア: 単行本 「他力本願」「悪人正機」で知られ、「南無阿弥陀仏」と唱えれば救われると説いた親鸞。その教えが戦前の皇国史観と結びついたというのはなんとも意外だが、本書を読めば、そ…

【2561冊目】蔭山宏『カール・シュミット』

カール・シュミット-ナチスと例外状況の政治学 (中公新書) 作者:蔭山 宏 発売日: 2020/06/22 メディア: 新書 新型コロナウイルスをめぐっては、これまで見られなかったような形で、国や自治体のトップの「決断」が注目された。日常とかけ離れた環境で、確た…

【2560冊目】ピエール・ルメートル『監禁面接』

監禁面接 作者:ルメートル,ピエール 発売日: 2018/08/30 メディア: 単行本 企業の人事部長まで務めたアラン。50代でリストラされ、再就職の望みもかなわないまま、はや4年。アルバイトで食いつなぎつつエントリーした一流企業で、思いがけず最終試験に残…

【2559冊目】本田秀夫『発達障害』

発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち (SB新書) 作者:本田 秀夫 発売日: 2018/12/06 メディア: 新書 発達障害と一口に言っても、自閉スペクトラム(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などさまざまなタイプがある。そうした様々なタイプの…

【2558冊目】高田衛『八犬伝の世界』

八犬伝の世界―伝奇ロマンの復権 (中公新書 595) 作者:高田 衛 メディア: 新書 『南総里見八犬伝』を読み解いた一冊。2005年、ちくま学芸文庫で「完本」が刊行されたらしいが、今回読んだのは、古書店で入手した1980年刊行の中公新書。だいぶ内容が組み替わっ…