自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2584冊目】ジェームズ・キャメロン他『SF映画術』


SF好き、映画好きにはたまらん一冊だ。なにしろジェームズ・キャメロンが、スピルバーグやルーカスからノーランまで、名だたるSF映画の監督と語り合うのだから。


映画の撮り方や出演者との裏話もおもしろいが、個人的に一番興味深く読んだのは、彼らがどんな作品から影響を受けたか、というところ。


アシモフやクラークといったSF作家、映画なら『2001年宇宙の旅』から『スター・ウォーズ』あたりがよく出てくるのは当然として、日本の作品が思いのほかたくさん登場するのにびっくり。中でも多いのは「黒澤明」と「ゴジラ」。特にスピルバーグとの対談は、タイトル自体が「水爆大怪獣映画『ゴジラ』(1954)にみる地球外生命体の存在意義」なのだ。


地球外生命体、タイムトラベル、モンスター、AIといったトピックへの考察も多く、さすがに深い。科学者や政治家への不信と、人類全体への希望や期待が裏腹になっている。その狭間で「未来の先取り」をしているのが、まさにSF映画なのである。


最後に、特に気になった発言をいくつか引用してみる。気になったら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。ちなみにこの本、全編フルカラーで、映画の一場面からポスターまで図版もたくさん載っている。映画ファンならパラパラめくっているだけで飽きないだろう。


「興味深いのは、世界はかつてSF作品のなかにあった“未来”という場所になっているのに、反対に人はかつての未来像からどんどん離れつつあるってことだ」(ジェームズ・キャメロン


「フィルムメーカーとして最も重要なのは、少なくとも、畏怖と驚嘆の物語の中で、子供の自分でいられるってことだと思う」(スティーヴン・スピルバーグ


「人はいつだって不安を抱えている。不安はすべてを動かす。それゆえ、自分たちがなんとかやろうとしたことは、不安を軽減してくれる物語を作ることだった」(ジョージ・ルーカス


「SFは探検のための“乗り物”。教訓である必要はないんです」(クリストファー・ノーラン


「モンスターは、抽象的な考えにきちんと肉体をまとわせたもの。ゴジラも然り。ゴジラは、核攻撃の不安や恐怖の化身だったんだ」(ギレルモ・デル・トロ


「(SFは)人間が過去に行ったことと、これから行おうとしていることを映し出す鏡でもある」(リドリー・スコット


「何がおかしいって、僕は、自分が映画のヒーローで主人公のカイル・リース役にいかに向いているかを売り込むために昼食に行ったってことだよ」(アーノルド・シュワルツェネッガー


そ、そうだったんですね・・・。