2021-01-01から1年間の記事一覧
ぼけてもいいよ―「第2宅老所よりあい」から作者:村瀬 孝生西日本新聞社Amazon 「第2宅老所よりあい」は、福岡市にある高齢者の生活の場のこと。本書は、この地域の中のごくふつうの民家に、通い、あるいは暮らすお年寄りとの日々を綴った一冊だ。高邁な理想…
氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書)作者:尾脇 秀和筑摩書房Amazon ややこしくも、大変面白い本でした。苗字があって、名前がある。現代の私たちには当たり前のことですが、実は、江戸時代以前はそうではありませんでした。当時は自分…
マイナス50℃の世界 (角川ソフィア文庫)作者:米原 万里,山本 皓一KADOKAWAAmazon 今朝のニュースで、カナダでは気温がマイナス50℃に達した、と言っているのを見て、この本を思い出しました。ロシア語通訳の達人にして名エッセイスト、米原万里の初の著作で…
昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)作者:宮部 みゆき文藝春秋Amazon 杉村三郎シリーズの最新作。「絶対零度」「華燭」「昨日がなければ明日もない」の中編3つが収められています。「絶対零度」はとにかく読後感が胸糞。しばらく引きずってしまい…
この間、100冊を通して読んでみたのですが、あらためて秀逸なセレクションだと感じ入りました。 ですので、その選書に異をとなえるつもりはないのですが、やはりこう見事な選書眼を披露されると、それをほめるだけではなんだか物足りないんですよね。及ばな…
地球星人(新潮文庫)作者:村田沙耶香新潮社Amazon いや〜、いいですね〜。狂ってます。これまで読んできた村田作品の中でも、本書はかなりぶっちぎっています。リミッターが外れているというか、遠慮がないというか、容赦がないというか。主人公の「私」は…
感じるオープンダイアローグ (講談社現代新書)作者:森川すいめい講談社Amazon オープンダイアローグについて書かれた本はいろいろありますが、本書はその中でも、短いながらその本質に迫った一冊なのではないかと思います。その理由の一つは、著者が自らオー…
の生成ー中動態と当事者研究" title="の生成ー中動態と当事者研究"><責任>の生成ー中動態と当事者研究作者:國分功一郎,熊谷晋一郎新曜社Amazon 決して簡単な内容ではありません。特に「中動態」という概念は、定義を読めば理解はできるのですが、なかなか体…
その先は永代橋作者:草森紳一幻戯書房Amazon 博覧強記、稀代の読書家であった草森紳一は、2008年、門前仲町の自宅で、本に埋もれるようにして亡くなりました。本書はその晩年に書かれた2つの連載エッセイを収録した一冊です。第一部「その先は永代橋」は、…
こころ (新潮文庫)作者:漱石, 夏目Shinchosha/Tsai Fong BooksAmazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン100冊目。夏に始まった100冊読破企画も、秋の終わりを迎え、やっとこさ終わりました。記念すべき100冊目は、言わずと知れた定番中の定番、近…
1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)作者:一木 けい新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン99冊目。過去と現在が交錯する連作短篇集。著者のデビュー作とのことですが、信じられない完成度です。冒頭のシーンから、イカを捌いてい…
コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)作者:町田そのこ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン98冊目。フェロモン全開でファンクラブまである超個性的な店長がいるコンビニ「テンダネス門司港こがね村店」が舞台の連…
ハレルヤ! (新潮文庫)作者:重松 清新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン97冊目。学生時代にバンドを組んでいた5人が、人生の後半を迎えてバンドの再結成に向けて動き出す・・・・・・というような話じゃなくて、安心した。本書で描かれてい…
豆の上で眠る(新潮文庫)作者:湊かなえ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン95冊目。失踪した姉が2年ぶりに帰ってくるが、妹だけは姉が偽物だと思えて仕方がない・・・・・・という話なのですが、実は半分以上が、姉の失踪期間中の出来事で…
夏の庭―The Friends (新潮文庫)作者:香樹実, 湯本新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン94冊目。名作です。平成4年の刊行ですから、定番の名作が多い児童文学としてはかなり「新しい」作品ですが、おそらく本書は、はこれからもずっと読…
か「」く「」し「」ご「」と「(新潮文庫)作者:住野よる新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン93冊目。高校生5人が主人公の連作短編です。章ごとに語り手が変わります。変わっているのは、それぞれが相手の心の中を覗ける特殊能力をも…
あと少し、もう少し (新潮文庫)作者:瀬尾 まいこ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン92冊目。中学駅伝に挑む6人を主人公とした作品です。いい作品でした。まず構成がいい。1区から6区まで、それぞれの区間の走者を語り手に、同じ時…
月まで三キロ(新潮文庫)作者:伊与原新新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン91冊目。珠玉の短篇集です。どれくらい素晴らしいかというと、図書館で借りて読み始めたにもかかわらず、最初の作品を読んですぐ本屋に走ったくらい。こうい…
許されようとは思いません(新潮文庫)作者:芦沢央新潮社Amazon 火のないところに煙は(新潮文庫)作者:芦沢央新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン89•90冊目。100冊中に複数作品がエントリーされていたのは、芦沢央のほかには重松…
儚い羊たちの祝宴(新潮文庫)作者:米澤 穂信新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン88冊目。舞台は現代のはずなのに、スマホもゲームもSNSも出てこない。裕福な旧家の屋敷や召使いたち、どこか病んでいる登場人物、まるで横溝正史か…
この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)作者:記久子, 津村新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン87冊目。ちょっと風変わりな「お仕事小説」。風変わり、というのは、お仕事小説の多くは「一つの仕事を通じて人間が成長していく」プロセ…
塩狩峠 (新潮文庫)作者:綾子, 三浦新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン86冊目。読み終えて、いろんなことを考えさせられました。特に、キリスト教というもの、信仰というものと、そろそろ正面から向き合わなければなるまい、という思…
ホワイトラビット(新潮文庫)作者:伊坂幸太郎新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン85冊目。誘拐ビジネス。たてこもり。死体隠しに、オリオン座に「レ・ミゼラブル」。う〜ん。並べてみても、まったくもって意味不明ですね。でも、この…
号泣する準備はできていた (新潮文庫)作者:香織, 江國新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン84冊目。「前進、もしくは前進のように思われるもの」「じゃこじゃこのビスケット」「熱帯夜」「煙草配りガール」「溝」「こまつま」「洋一も…
青の数学(新潮文庫nex)作者:王城夕紀新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン83冊目。数学と情緒を結びつけて語ったのは岡潔ですが、この小説では、数学と叙情が結びついています。細かい説明よりも、独特の空気感に包まれて読む小説で…
春琴抄(新潮文庫)作者:谷崎潤一郎新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン82冊目。再読ですが、何度読んでもヤバい小説です。「愛している」と、言葉で言うのは簡単です。それなりの行動で示すことも、あるでしょう。でも、ここに出てく…
ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)作者:ジェイコブズ,ハリエット・アン新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン81冊目。当初はフィクションと思われて忘れられていたが、実話とわかるや否やベストセラーになったといういわくつきの…
あつあつを召し上がれ (新潮文庫)作者:小川 糸新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン80冊目。実ははじめての小川糸作品。前から気になっていた作家さんではあったのですが。短篇集です。どの作品も、食べ物が登場し、重要な役割を演じて…
明るい夜に出かけて(新潮文庫)作者:佐藤多佳子新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン79冊目。大学を休学し、コンビニの夜勤バイトで生活する富山は、実はひそかに深夜ラジオにネタを投稿しています。実は、以前は別の名前で頻繁に投稿…
新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)作者:賢治, 宮沢新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン78冊目。「よだかの星」「オツベルと象」「猫の事務所」「セロ弾きのゴーシュ」など定番の名作揃いですが、やはり表題作「銀河鉄道の夜」が一頭抜けて…