hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2583冊目】辻村深月『盲目的な恋と友情』


いや〜、びっくりだった。辻村深月って、こんな「怖い」小説を書く人だったのか。


この人の本は数冊しか読んでいないので、あまりえらそうなことは言えないが、今まで読んだことのある作品とは、明らかに毛色が違っていた。「恋」「友情」というと明るくキラキラしたものを連想するかもしれないが、著者がこの小説で描くのは、むしろ、人間の情念、というか、妄執、というか、あるいは「業」のようなもの。


恋愛沼の暗くドロドロした深みを描く作家は今までもいたが、この本が凄いのは「友情」をそれに並べ、同じくらいのドロドロを描き切ったこと。いや〜、人間って怖い。女って怖い、とも書きたいが、それは怒られそうなのでやめときます(ただし、本書に出てくる男性が、揃いも揃って救いがたくガキっぽいことは言っておきます)。


ちなみに、解説で山本史緒さんが、どちらかと言うと狂言回し的な役割の美波について「一見脇役に見えて、この物語の芯であると感じた」と書いているのを読んで、なるほど、と思った。


確かに、そう考えれば、いろんなものが見えてくる。特に、一人称の語りではなかなか見えてこない、蘭花や留利絵の「ゆがみ」は、バランスの取れた美波の存在に照らすことで明らかになってくる。考えてみればこの人こそ、その手の「怖い」小説を書かれる方であった。さすがの慧眼である。