2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧
月と六ペンス (新潮文庫)作者:サマセット モーム発売日: 2014/03/28メディア: 文庫 大傑作である。久しぶりに読み返したが、あらためてものすごい作品だと思う。人間の真実そのものが、この一冊にあますところなく描かれている。ロンドンの平凡な株式仲買人…
羊と鋼の森 (文春文庫)作者:宮下 奈都発売日: 2018/02/09メディア: Kindle版 映画化もされたベストセラーなので、内容はご存知の方が多いだろう。見習い調律師の成長を描いた作品なのだが、さほど抵抗なくするする読める。主人公の外村が、いろいろ悩みや葛…
神の代理人 (新潮文庫)作者:塩野 七生発売日: 2012/10/29メディア: 文庫 「神の代理人」とは、カトリックの最高位、ローマ教皇のことである。ルネサンス期のローマ教皇のうち4人を描いた本書は、質量ともに単行本4冊分。後年の塩野七生なら内容をもっと膨…
原稿の書き方 (講談社現代新書 433)作者:尾川 正二メディア: 新書 なんと1976年に刊行された「書き方指南」の本。古い。だいたい、いまどき原稿用紙にものを書く機会さえほとんどない。それでも、この本に書かれれている指摘の多くは、今も十分役に立つ。そ…
幼年 (河出文庫) 作者:福永 武彦 メディア: 文庫 「幼年」「伝説」「邯鄲」「風雪」「あなたの最も好きな場所」「湖上」の6篇が収められている。 最初の「幼年」が変わっている。著者自身の幼年時代を綴ったものなのだが、段落の切れ方がヘンなのだ。文章の…
美術館は久しぶり。展覧会が再開されていたのは知っていたが、なんとなく足が遠のいてしまっていた。習慣が途切れるとはおそろしい。 さて、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展である。展示数は61点と、イギリスを代表する美術館の大規模コレクション展とし…
認知症の人の心の中はどうなっているのか? (光文社新書)作者:佐藤眞一発売日: 2018/12/12メディア: 新書 これは良い本だった。認知症の症状や特性などの解説もわかりやすいが、なんといっても認知症ではなく「認知症の人」にフォーカスしているところがすば…
龍馬史 (文春文庫)作者:道史, 磯田発売日: 2013/05/10メディア: 文庫 司馬遷が『史記』で創始した、紀伝体というスタイルがある。一人の人間に着目して、歴史を綴っていく手法だ。本書はいわば幕末版紀伝体。坂本龍馬という人物を描きつつ、龍馬というスコー…
神様 (中公文庫)作者:川上 弘美発売日: 2001/10/01メディア: 文庫 デビュー作「神様」の完成度にまず驚いた。「くまにさそわれて散歩に出る」という書き出しが良い。何の説明もなく、読者を異世界に引っ張り込む。「熊に誘われて」などと漢字を使わないのは…
ケアするまちのデザイン:対話で探る超長寿時代のまちづくり作者:山崎 亮発売日: 2019/03/28メディア: 単行本 コミュニティ・デザイナーの著者が、「ケアするまちづくり」の現場を訪ねて行った鼎談4つをおさめている。福祉、医療、コミュニティが交錯する現…
「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと作者:史代, こうの,須直, 片渕発売日: 2019/11/29メディア: 単行本 映画『この世界の片隅に』を監督した片渕須直氏と、原作を描いたこうの史代氏が、映画の公開から、(監督曰く…
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者:佐々 涼子発売日: 2017/02/09メディア: 文庫 いろんなことを忘れていた。そのことを反省させられる一冊だった。震災のことを忘れていた。いや、忘れてい…
82年生まれ、キム・ジヨン作者:チョ・ナムジュ発売日: 2019/02/13メディア: Kindle版 読んでいて「これは私のことだ」と思える小説が、ときどきある。おそらく多くの女性にとって、本書の主人公キム・ジヨンの人生は、他人事には感じられないのではないか。…
介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語 (新潮文庫)作者:由実, 六車発売日: 2018/05/27メディア: 文庫 『驚きの介護民俗学』という本には、文字通り驚かされた。介護現場こそがもっとも豊かな「語り」の場であり、現代の古老は老人ホームにいる。そ…
水墨画入門 (岩波新書) 作者:新, 島尾 発売日: 2019/12/22 メディア: 新書 冒頭のカラー口絵に、まず息を呑む。郭熙「早春図」に牧谿「観音猿鶴図」、長谷川等伯「松林図屏風」に雪舟「冬景山水図」と、オールタイムベスト級の水墨画がずらりと並ぶ。西洋絵…