hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

人類・人間・人生

【2822冊目】遠藤周作『海と毒薬』

海と毒薬(新潮文庫)作者:遠藤周作新潮社Amazon 戦時中に起きた米軍捕虜の生体解剖実験を扱った、遠藤周作の代表作のひとつです。本書に出てくる人々はみな、どこか不気味です。生体解剖というとんでもないことをしようとしているのに、全員が「なんとなく…

【2807冊目】宇佐見りん『推し、燃ゆ』

推し、燃ゆ作者:宇佐見りん河出書房新社Amazon これはすごかった。新たな日本文学の誕生だ。言葉の熱量がすごい。それを完全にハンドリングして、ドライブする著者の腕力がすごい。現代的でありながらすべての年齢層に通じる、個性的で普遍的な文章がすごい…

【2802冊目】深沢潮『海を抱いて月に眠る』

海を抱いて月に眠る (文春文庫 ふ 47-1)作者:深沢 潮文藝春秋Amazon 「在日文学」という言い方は大雑把すぎてあまり好きじゃないが、こういう本を読むと、やはりこれは「在日文学」という表現が一番ふさわしいと思えてくる。頑固で横暴なだけと思っていた父…

【2799冊目】篠田桃紅『その日の墨』

その日の墨 (河出文庫)作者:篠田 桃紅河出書房新社Amazon 100歳を超えてなお現役書家として活躍し続けた著者による随筆です。ちなみに昨年3月、お亡くなりになりました。享年107歳。合掌。この人がすごいのは、単に高齢になっても書を続けたというだけでな…

【2793冊目】しりあがり寿『方舟』

方舟作者:しりあがり寿太田出版Amazon 降り続く雨。水位は次第に上昇し、家が、ビルが、人が、少しずつ水に沈んでいく。不安を直視できず、バカ騒ぎを続けるテレビ。棒読みの「公式発表」を繰り返す政府。そんな中、突然出現する「方舟」。ハミガキのキャン…

【2787冊目】フローベール『三つの物語』

三つの物語 (光文社古典新訳文庫)作者:フローベール光文社Amazon フローベール晩年の短編3篇が収められています。フローベールは長編小説が有名ですが、短編も素晴らしいですね。中でも「聖ジュリアン伝」はものすごい。実はこの作品はポプラ社の「百年文庫…

【2777冊目】夏目漱石『こころ』

こころ (新潮文庫)作者:漱石, 夏目Shinchosha/Tsai Fong BooksAmazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン100冊目。夏に始まった100冊読破企画も、秋の終わりを迎え、やっとこさ終わりました。記念すべき100冊目は、言わずと知れた定番中の定番、近…

【2775冊目】町田そのこ『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』

コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)作者:町田そのこ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン98冊目。フェロモン全開でファンクラブまである超個性的な店長がいるコンビニ「テンダネス門司港こがね村店」が舞台の連…

【2772冊目】湯本香樹実『夏の庭』

夏の庭―The Friends (新潮文庫)作者:香樹実, 湯本新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン94冊目。名作です。平成4年の刊行ですから、定番の名作が多い児童文学としてはかなり「新しい」作品ですが、おそらく本書は、はこれからもずっと読…

【2759冊目】ハリエット・アン・ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』

ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)作者:ジェイコブズ,ハリエット・アン新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン81冊目。当初はフィクションと思われて忘れられていたが、実話とわかるや否やベストセラーになったといういわくつきの…

【2754冊目】乃南アサ『しゃぼん玉』

しゃぼん玉 (新潮文庫)作者:アサ, 乃南新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン76冊目。親から愛されず育ち、何をやっても長続きせず、ひったくりで生活している翔人が、ひょんなことから山深い村で老婆の世話になり、人間性を取り戻して…

【2747冊目】山本周五郎『さぶ』

さぶ (新潮文庫)作者:周五郎, 山本新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン69冊目。最初に読んだのは大学生の頃だっただろうか。そのときは通り過ぎるように読んだのだと思うが、それなりに年を重ねてから読むと、印象が全然違う。たとえ…

【2741冊目】山崎豊子『約束の海』

約束の海 (新潮文庫)作者:豊子, 山崎新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン63冊目。海上自衛隊の潜水艦と釣り船の衝突事故に翻弄される二等海尉、花巻朔太郎を主人公とした長編小説です。歴史をまたいだ大長編として構想されつつ、著者…

【2739冊目】中村文則『土の中の子供』

土の中の子供 (新潮文庫)作者:文則, 中村新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン61冊目。短いけれど、重く暗い、ねっとりと絡みつくような小説です。いわく言い難い異様な迫力があって、読み始めたら本を置けなくなりました。親に捨てら…

【2725冊目】柚木麻子『BUTTER』

BUTTER(新潮文庫)作者:柚木麻子新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン47冊目。男たちに取り入って財産を奪い、殺害したとされる獄中の梶井真奈子。その独占インタビューを実現しようとするが、次第に梶井に取り込まれていく里佳。その…

【2724冊目】フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon 罪と罰〈下〉 (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン46冊目。何度読んだかわからない。そして、読むたびに新しい発見と感動がある。名作とは…

【2723冊目】ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』

ハムレット (新潮文庫)作者:ウィリアム シェイクスピア新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン45冊目。父王の亡霊が登場する冒頭のシーンから、いくつもの死体が転がる壮絶なラストまで、圧倒的な密度と緊張感に満ちた復讐譚。シェイクス…

【2717冊目】三島由紀夫『金閣寺』

金閣寺 (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン39冊目。圧倒的な美文で綴られる、圧倒的に醜悪な自己韜晦。再読でしたが、読むのがツラい一冊でした。初読は大学生の頃だったと思いますが、当時は主人公の溝…

【2705冊目】宮本輝『錦繍』

錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)作者:宮本 輝新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン27冊目。昨日紹介した『白いしるし』と同じ、30代の女性が主人公。でも、その二人の、なんと違うことか。『白いしるし』の夏目さんは、よく言えば若々しく…

【2701冊目】アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』

老人と海(新潮文庫)作者:ヘミングウェイ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン23冊目。ちなみに「100冊」に入っているのは新訳ですが、今回はなじみの深い福田恆存訳で再読しました(だから表紙も旧バージョン)。多くの人が最初に触…

【2697冊目】アルベール・カミュ『異邦人』

異邦人 (新潮文庫)作者:カミュ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン19冊目。大学生の頃、一度読みましたが、その時はなぜこれが文学史上に残る名作と言われるのか、あまりピンときませんでした。唐突な殺人に至る前半は退屈で、後半の…

【2683冊目】トルーマン・カポーティ『冷血』

冷血 (新潮文庫)作者:トルーマン カポーティ新潮社Amazon 5年にわたる取材をもとに、実際に起きた事件を描く。今では珍しくもないクライム・ノンフィクションの手法だが、当時は斬新だった。もっとも著者自身はこの本を「ノンフィクション・ノヴェル」と呼…

【2682冊目】宇佐美まこと『展望塔のラプンツェル』

展望塔のラプンツェル作者:宇佐美 まこと光文社Amazon こないだ読んだ『羊は安らかに草を食み』がとても良かったので、同じ著者の作品ということでコチラを読んでみました。いやあ、驚きました。同じ作者とは思えないほど、「羊」とはまったくトーンが違いま…

【2671冊目】鬼海弘雄『世間のひと』

世間のひと (ちくま文庫)作者:鬼海 弘雄筑摩書房Amazon 東京・浅草、浅草寺。著者は、1973年から40年にわたり、そこに行き交う人を撮り続けた。撮られているのは、ほとんどが無名の人ばかり。言うなれば、私が普段すれ違っている人、電車で乗り合わせた人と…

【2669冊目】ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)作者:ギュスターヴ フローベール新潮社Amazon 美しい人妻エンマは、平凡な夫に飽きていた。夢見ていたようなロマンティックな結婚生活が得られず、ついつい浮気に走ってしまう。最初は、女遊びに慣れた中年イケメンのロドルフに誘…

【2658冊目】南木佳士『からだのままに』

からだのままに (文春文庫)作者:南木 佳士文藝春秋Amazon 医師であり、作家でもある著者が、これまでの半生を振り返って綴るエッセイです。特に派手だったり面白い話があるというわけではないのですが、どのエッセイも、じんわりと身体に沁み込むような味わ…

【2639冊目】トニー・パーカー『殺人者たちの午後』

殺人者たちの午後作者:トニー・パーカー飛鳥新社Amazon これはすごい本だ。滅多にない一冊だ。収められているのは、10のインタビュー。その相手は、男性もいれば女性も、若者もいれば老人もいる。共通点はただひとつ。殺人を犯し、終身刑となったこと。ちな…

【2636冊目】モーリヤック『テレーズ・デスケイルゥ』

テレーズ・デスケイルゥ(新潮文庫)作者:モーリヤック新潮社Amazon テレーズの夫ベルナールは、暴力を振るうわけでも、酒やギャンブルにハマっているわけでも、浮気しているわけでもない。まあ、世間一般でいえば、「良い夫」ということになるのだろう。と…

【2632冊目】ジャン・ジュネ『泥棒日記』

泥棒日記 (新潮文庫)作者:ジャン ジュネ新潮社Amazon 「裏切りと、盗みと、同性愛が、この本の本質的な主題である」(p.256)本書では同性愛を、裏切りや盗みと同列の悪徳に満ちた行為として描いている。この本が書かれた時代はそういうふうに見られていたのだ…

【2621冊目】せなけいこ『ねないこはわたし』

ねないこはわたし作者:けいこ, せな文藝春秋Amazon 『ねないこ だれだ』でおなじみの絵本作家、せなけいこさんの自伝的作品です。おなじみの切り絵もたくさん登場して、見ているだけてたのしい一冊になっています。せなさんの最初の絵本は、自分の子どもにに…