【2585冊目】米澤穂信『氷菓』
全体的には、小説というよりアニメのノベライズ、といった印象。ポップな展開、わかりやすくキャラの立った登場人物、そしてシンプルだけどそこそこ意外性のある謎解き。たいへんに読みやすい。
もうひとつ、アニメ的(というか映像的)と思ったのが、語り手がいわゆる探偵役になっているところ。これ、アニメや漫画ではよくあるが(「コナン」とか「金田一少年」とかね)、小説だとけっこうむずかしい。一人称小説では、読み手は主人公の見たもの、感じたことを追体験することになるため、理屈で言えば、推理のプロセスが丸見えになってしまうはずだからだ。
このあたりは、本書はうまく描写を省略してやり過ごしているが、それでも、「小説」の読み手としては、同化しているはずの語り手に突然置いて行かれたような感じになってしまう。
まあ、だから推理小説では、ホームズにはワトソンが、ポアロにはヘイスティングスがいるワケで、読者はワトソンと一緒になってホームズの推理を追いかけることになるわけである。やはりこの本は、語り手と内面を共有するという意味での「小説」ではなく、すべての登場人物が「外側」で動き回る、アニメ的作品なのだろう。
そのあたりが気にならないなら、十分楽しめると思います。