自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2572冊目】星新一『ボッコちゃん』

 

ボッコちゃん(新潮文庫)

ボッコちゃん(新潮文庫)

 

 

こないだnoteにもアップしたが、久しぶりに読み返したので、コチラにも。中身はほぼ一緒です。

読んだのは中学生のころだっただろうか。当時はほとんどの本を図書館で借りていたので、手元には残っておらず、古本屋で再購入。真鍋博の表紙やイラストがなつかしい。

当時、星新一ショートショートは片っ端から読んでいた。他のどの小説とも違っていた。ドライで未来的な世界観。エヌ氏、エフ氏というネーミングもしゃれていて、人間臭くないのがよかった。思えば私にとってSFの入口は星新一だった。そこから小松左京、クラーク、アシモフと進んでいけば立派なSFファンになれたのかもしれないが、私はなぜかかんべむさし筒井康隆と読み進んでしまい、ブラックでシュールな世界観のほうにどっぷり浸ってしまった。

短いながら周到に物語が組み立てられていて、特に伏線の使い方が絶妙だ。表題作「ボッコちゃん」は、シンプルで機械的な会話(これって現代のスマートスピーカーの先駆では)しかできない美人ロボットという設定を軸に、これをうまく使って儲けようというバーのマスターの思惑と、機械的な会話だからこそハマっていく人の哀しさみたいなものがうまく組み合わさって、ブラックなラストにつながっていく。環境問題をいちはやく風刺した「おーい、でてこーい」は、なんでも吸い込んでくれる穴という都合の良いものに出会った人間の描写がうまい。石ころからゴミ、放射性廃棄物、人間の死体と、読者を巻き込みながらじわじわとエスカレートさせ、ラストで一挙にひっくり返す。文庫本でわずか6ページの分量ながら、人間の愚かしさと環境問題の本当のヤバさを、どんな専門書よりするどく読者に突きつけてくる。

中学生の頃は気にも留めなかった抒情的な作品がけっこう響いてくるのは、やはりそれなりに大人人になったということなのか。「月の光」など、当時はわけもわからず読み飛ばしていたと思われるが、今読むと珠玉の名品である。ホラーっぽい「闇の眼」も、今だといろいろ考えさせられる。人間の能力って何なのか。障害って何なのだろうか。