自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2521冊目】荒井裕樹『障害者差別を問いなおす』

『障害と文学』『差別されている自覚はあるか』など、先鋭的な視点で日本の障害者運動や障害者差別の歴史を追い続けてきた著者による、本気の「障害者差別論」。とはいえ、精神障害者や知的障害者への差別のこと、障害者権利条約や障害者差別解消法のこと等…

【2520冊目】カート・ヴォネガット『国のない男』

国のない男 (中公文庫) 作者:カート・ヴォネガット 発売日: 2017/03/22 メディア: 文庫 以前読んだ『スラップスティック』より、私にはこちらの本のほうがすんなり入ってきた。御年82歳のヴォネガットによるエッセイ集。遺作である。 とはいえ、本書には枯…

【2519冊目】北村喜宣『リーガルマインドが身につく自治体行政法入門』

リーガルマインドが身につく自治体行政法入門 作者:喜宣, 北村 発売日: 2018/01/01 メディア: 単行本 冒頭の「小学校3年生の子どもに『役所って何をするところなの?』って聞かれたらどう答える?」という問いにまずドキッとする。あなたなら何と答えますか…

【本以外】選挙事務を終えて

たまには雑談的に。選挙のことなど。 この「読書ノート」をお読みの方はご存知だろうが、選挙事務を担っているのは区市町村の職員である。それは国政選挙だろうが、今回のように知事選だろうが同じこと。地方自治法別表の「法定受託事務リスト」を見ていただ…

【2518冊目】小川洋子『ブラフマンの埋葬』

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫) 作者:小川 洋子 発売日: 2007/04/13 メディア: 文庫 ブラフマンとは、本書の説明ではサンスクリット語で「謎」という意味。だが実際は、ヒンドゥー教の宇宙原理を指す。だから「ブラフマンの埋葬」とはものすごく深遠なタイト…

【2517冊目】高石宏輔『あなたは、なぜ、つながれないのか』

このタイトルは、ちょっとずるい。人間関係やコミュニケーションに悩む人であればあるほど、このタイトルは釣り針のように引っかかって外れなくなる。 内容もまた、心に引っかかって外れなくなる「釣り針フレーズ」が満載だ。著者は大学時代に心を病み、路上…

【2516冊目】アニー・デューク『確率思考』

著者の経歴が異色である。現在は意思決定コンサルタントとして活躍中とのことだが、その前はなんと、プロのポーカー・プレーヤーだったのだ。世界大会での優勝経験もあるというから、ギャンブラーのトッププロといっていい。。 本書は、そんな「賭けの達人」…

【2515冊目】藤沢晃治『「分かりやすい表現」の技術』

「分かりやすい文章」の技術―読み手を説得する18のテクニック (ブルーバックス) 作者:藤沢 晃治 発売日: 2004/05/21 メディア: 新書 最初に一言。この本、今年1月に新装版が出ている。しかも単行本である。新書が単行本として「新装」されるのはちょっとめ…

【2514冊目】吉村昭『透明標本 吉村昭自選初期短篇集2』

透明標本-吉村昭自選初期短篇集II (中公文庫) 作者:吉村 昭 発売日: 2018/10/23 メディア: 文庫 自選初期短篇集として編まれた2冊のうちの1冊。もう一方の『少女架刑』のレビューはコチラ 吉村昭といえば歴史モノや、実際の事件をもとにした作品が多い印象…

【2513冊目】赤坂憲雄『排除の現象学』

排除の現象学 (ちくま学芸文庫) 作者:赤坂 憲雄 発売日: 1995/07/01 メディア: 文庫 本書が刊行されたのは1986年。当時の日本では、すでにさまざまなカタチでの「排除」が起きていた。そして残念なことに、当時と現代を比べると、どう考えても、排除や差…

【2512冊目】シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス『迷惑な進化』

迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか 作者:モアレム,シャロン,プリンス,ジョナサン 発売日: 2007/08/25 メディア: 単行本 たとえば、ヘモクロマトーシス。体内に鉄が溜まるという遺伝病である。西ヨーロッパ系の人々に多く、原因となる遺伝子をもって…

【2511冊目】斉須政雄『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫) 作者:斉須 政雄 発売日: 2006/04/01 メディア: 文庫 「毎日やっている習慣を、他人はその人の人格として認めてくれる」(p.37) どんな道であれ、その道で「ホンモノ」となった人の言葉は、…

【2510冊目】井上ひさし『十二人の手紙』

十二人の手紙 (中公文庫) 作者:ひさし, 井上 発売日: 2009/01/25 メディア: 文庫 11の書簡形式の短編が、これも書簡による「プロローグ」と「エピローグ」に挟まれている。個々の短編は独立しているが、エピローグで思わぬつながりを見せ、同時にプロロー…

【2509冊目】樋口直美『誤作動する脳』

誤作動する脳 (シリーズ ケアをひらく) 作者:樋口 直美 発売日: 2020/03/02 メディア: 単行本 最近こういった本が増えてきた。こういった本、というのは、病気や障害の当事者みずからが、その体験や思いを語る本、ということだ。高機能自閉症、統合失調症、…

【本以外】映画『コリーニ事件』を観てきました

久々の映画リポート。というか、そもそも映画館で映画を観ること自体が久しぶり。これまで当たり前にやっていたことのありがたみを感じる。客と客の間に空席を2つずつという「コロナ対応モード」は、映画館の収益上のダメージは大きいだろうが、観る側とし…

【2508冊目】ジャン=ガブリエル・ガナシア『虚妄のAI神話 「シンギュラリティ」を葬り去る』

シンギュラリティとは、AIが人類をしのぐ知能を獲得する「技術的特異点」のこと。だが、著者はそれを幻想にすぎないと断言する。そもそもAI(人工知能)とは、もともとは人間や動物のもっている知能をよく理解するための方法として、コンピュータ上で知…

【2507冊目】藤井誠一郎『ごみ収集という仕事』

ごみ収集という仕事: 清掃車に乗って考えた地方自治 作者:誠一郎, 藤井 発売日: 2018/06/06 メディア: 単行本 大学で教えるセンセーが、9カ月にわたりごみ収集の現場で働きつつ「参与観察」を行った。本書はそこから見えてきたごみ行政の現実をもとに、歴史…

【2506冊目】宮尾登美子『寒椿』

寒椿 (新潮文庫) 作者:登美子, 宮尾 発売日: 2002/12/25 メディア: 文庫 生みの親に売られた先の芸妓子方屋「松崎」で、共に過ごした4人の女性の、行く末の物語を綴った短篇集。 4人の生涯は、一般的な意味では、決して幸福とはいえないだろう。男に囲われ…

【2505冊目】マーク・チャンギージー『ヒトの目、驚異の進化』

お客様の中に、テレパシーを使える方、透視のできる方、未来を予知できる方、死者の言葉を聞くことができる方はいらっしゃいますか? そう問われたら、あなたが一定の視覚障害をお持ちでない限り、この問いかけに手を挙げなければならない。なぜか。 まず「…

【2504冊目】ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

たいへんよく売れている本。こういう本が売れていることに、今の日本へのかすかな希望を感じる。 ミドルクラスの通うカトリック系小学校から急転直下、格差と貧困の渦巻く「元底辺中学校」に通うことになった著者の息子さんが、本書の主人公。思春期の入口に…

【2503冊目】カート・ヴォネガット『スラップスティック』

スラップスティック 作者:カート ヴォネガット,浅倉 久志 発売日: 2013/06/04 メディア: Kindle版 Kindle版しか出てこないが、読んだのは文庫。古書店で購入した。 初ヴォネガット。「自伝に近いもの」ということだが、書いているのは合衆国大統領。幼い頃は…

【2502冊目】網野善彦『日本中世の百姓と職能民』

日本中世の百姓と職能民 (平凡社ライブラリー) 作者:網野 善彦 発売日: 2003/06/09 メディア: 文庫 第1部「百姓」、第2部「職能民」の2部構成。論文を集成した一冊とのことで、一般向けというにはやや詳細で専門的なものも含まれている。 まずは「百姓」…

【2501冊目】後藤好邦『自治体職員をどう生きるか』

自治体職員をどう生きるか 作者:後藤好邦 発売日: 2019/12/26 メディア: Kindle版 検索してもKindle版しか出てこない。なぜだろう。 著者の名前は初めて知ったのだが、ギョーカイでは有名な方なのだろうか。山形市の職員であり、東北オフサイトミーティング…

【本以外】コロナ対策雑考メモ

早くもというか、ようやくというか、緊急事態宣言が全国で解除された。 日本のコロナ対策については、ずっといろいろ思うところがあったのだが、このタイミングでちょっと吐き出しておこうと思う。とはいっても、ロジカルな文章にまとめる気力がないので、徒…

noteで新しい企画をはじめました

2500冊目という節目を迎えて、新たな企画をスタートしました。 noteのほうに、これまで読んだ本をベースに「おすすめブックリスト」を発表していきたいと思います。とりあえず4つアップしましたので、気になる方は覗いてみてください。そして、もっといい本…

【2500冊目】オイゲン・ヘリゲル『弓と禅』

弓と禅 作者:オイゲン・ヘリゲル 発売日: 1981/11/01 メディア: 単行本 弓の名人、阿波研造のもとで5年にわたり弓道を学んだドイツ人著者が、その体験を記した一冊。西洋の論理や合理にどっぷり漬かった著者(実は著者のヘリゲル氏、新カント学派を主に教え…

【2499冊目】福島香織『ウイグル人に何が起きているのか』

ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在 (PHP新書) 作者:福島 香織 発売日: 2019/06/19 メディア: 新書 ナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺が明らかになったのは、戦争が終わってからだった。もし戦時中からアウシュヴィッツの存在が知られてい…

【2498冊目】ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド『FACTFULNESS』

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 作者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド 発売日: 2019/01/11 メディア: 単行本 今や「フェイクニュース」なんて言葉が登場し…

【2497冊目】沢木耕太郎『テロルの決算』

新装版 テロルの決算 (文春文庫) 作者:沢木 耕太郎 発売日: 2008/11/07 メディア: 文庫 昭和35年10月12日、社会党委員長浅沼稲次郎が、日比谷公会堂演壇上で刺殺された。加害者は当時17歳の山口二矢。本書はこの衝撃的な事件に至る流れを、浅沼、山口の両面…

【2496冊目】金原ひとみ『アタラクシア』

アタラクシア 作者:金原 ひとみ 発売日: 2019/05/24 メディア: 単行本 アタラクシアとは、なんと皮肉なタイトルか。哲人エピクロスによれば、これは「外界からわずらわされない、激しい情熱や欲望から自由な、平静不動の心のさま」をいう(「コトバンク」よ…