自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

【2557冊目】小松左京『題未定』

題未定怪奇SF (文春文庫) 作者:小松 左京 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 ヘンな小説である。連載のタイトルが決まらないと悩んでいる作家(著者自身)のところに手紙が届くのだが、それがどれも「連載されている小説」についての感想なのである。…

【2556冊目】編集工学研究所『探究型読書』

探究型読書 作者:編集工学研究所 発売日: 2020/08/12 メディア: Kindle版 著者が「編集工学研究所」となっているが、ベースになっているのは所長である松岡正剛の読書法。読書を読前・読中・読後の3つのフェーズに分けて、それぞれの段階ごとに行うべき内容…

【2555冊目】原田マハ『たゆたえども沈まず』

たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫) 作者:原田マハ 発売日: 2020/04/08 メディア: Kindle版 「いちばん描きたいものをあえて中心に描かずに、その周辺を描くことで、見る者に連想を促し、主題を浮かび上がらせる」 本書の主人公フィンセント・ファン・ゴッホが…

【2554冊目】團伊玖磨『パイプのけむり』

パイプのけむり (朝日文庫 だ 1-1) 作者:團 伊玖磨 メディア: 文庫 13年にわたり書かれた名エッセイの、文庫版第一冊。第一作の「ハンドバッグ」は、女性のハンドバッグの中身が男性にとっては神秘の領域であることを的確かつユーモラスに綴っている。書かれ…

【2553冊目】マイケル・ルイス『マネーボール』

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男 作者:マイケル・ルイス 発売日: 2004/03/18 メディア: 単行本 野球を題材にしたビジネス書としても有名な一冊。本書の「主人公」ビリー・ビーンらは、常識に囚われないこと、データをもとに合理的に考察し、実践に…

【本以外】映画『TENET』を観てきました

観終わった直後の感想は、次の2つ。 「????????????」 「!!!!!!!!!!!!」 時間が流れる川のようなものだと考えれば、タイムマシンが出てくるような「時間遡行モノ」は、いわば川の下流から上流まで移動するようなもの。移動した後は…

【2552冊目】山口つばさ『ブルーピリオド』

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:山口つばさ 発売日: 2017/12/22 メディア: Kindle版 マンガ大賞を受賞した話題作というのは知っていたが、読んでみたら予想以上。「美術」をテーマにした学生群像劇という点では『のだめカンタービレ』…

【2551冊目】加藤徹『貝と羊の中国人』

貝と羊の中国人 (新潮新書) 作者:加藤 徹 発売日: 2006/06/16 メディア: 新書 京劇の研究が専門という著者による中国論。緻密というよりむしろラフスケッチ風なのだが、中国のような巨大で複雑な相手を扱うとなると、このくらい大雑把なほうが全体像をつかみ…

【2550冊目】辻陽『日本の地方議会』

日本の地方議会-都市のジレンマ、消滅危機の町村 (中公新書) 作者:辻 陽 発売日: 2019/09/14 メディア: 新書 地方議会をめぐる書籍の中でも、近年の良書である。新書というコンパクトなサイズの中に、地方議会の制度、現状、問題点、解決策をバランスよく収…

【2549冊目】中村智志『大いなる看取り』

大いなる看取り―山谷のホスピスで生きる人びと 作者:中村 智志 メディア: 単行本 東京・山谷のドヤ街にある「きぼうのいえ」は、行き場のない人々を看取るための施設である。 マザー・テレサの「死を待つ人の家」の日本版を作ろうと、山本雅基、美恵の二人が…

【2548冊目】真魚八重子『バッドエンドの誘惑』

バッドエンドの誘惑~なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか~ (映画秘宝セレクション) 作者:真魚 八重子 発売日: 2017/03/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) う〜ん。残念ながら、私にはちょっと合わなかった。タイトルはけっこうツボだったんだけどねえ。 …

【2547冊‌目】‌ク‌リ‌ス‌チャ‌ン・‌メ‌ル‌ラ‌ン‌『オー‌ケ‌ス‌ト‌ラ』‌

‌ オーケストラー―知りたかったことのすべて 作者:クリスチャン・メルラン 発売日: 2020/02/19 メディア: 単行本 本‌文‌500‌ペー‌ジ‌以‌上。‌索‌引‌だ‌け‌で‌30‌ペー‌ジ‌以‌上。‌お‌そ‌る‌べ‌き‌ボ‌リュー‌ム‌に‌最‌初‌は‌ビ‌ビ‌る‌が、‌読‌み‌始‌め‌る‌と‌…

【2546冊目】花輪莞爾『悪夢小劇場』

悪夢小劇場 (新潮文庫) 作者:花輪 莞爾 メディア: 文庫 この作家のことは全然、名前すら知らなかった。じんわりと漂うブラックユーモア。現実と非現実のあわいに漂うシュールな感覚。あえて似ている作家を思いつくまま挙げれば、筒井康隆、井上夢人、サキあ…

【2545冊目】中島梓『ガン病棟のピーターラビット』

ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫) 作者:中島 梓 発売日: 2015/01/02 メディア: 文庫 この人は生涯に、ガン闘病記を3冊書いている。以前取り上げた『アマゾネスのように』、本書、そして最期の日々を綴った『転移』である。何度もガンになってしまう…

【2544冊目】道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫) 作者:道尾秀介 発売日: 2012/07/01 メディア: Kindle版 後から考えるとけっこう陰惨で救いのない話なのだが、その割に読後感は妙にさわやかだ。だがそのさわやかさは、どこか病んでいる。それがかえって、じんわりと怖い。ち…

【2543冊目】伊藤亜紗『記憶する体』

記憶する体作者:伊藤 亜紗発売日: 2019/09/18メディア: 単行本 たとえば、ある全盲の女性は話しながらメモをとる。別のやはり全盲の男性は、数字の0はピンク、1は白など、数字や文字から色彩を連想する。交通事故で左足の膝から下を失った男性は、「ない足を…