【2839冊目】町田康『夫婦茶碗』
短編2つが入っています。「夫婦茶碗」は働かない夫が妻に言われていろいろ仕事をするがうまく行かない話、「人間の屑」はいろいろあって逃げ回らざるを得なくなったパンクロッカーの珍道中・・・・・・なのですが、そこは町田康ですから、それだけでは済みません。とにかく饒舌で、しかもどんどん脱線していく、その脱線が面白い。
「夫婦茶碗」では、童話作家になろうといきなり思い立った「わたし」による「子熊のゾルバ」というお話が延々と展開され、
「人間の屑」では、脱「SMうどん」というとんでもないネタに爆笑。
まあ、筋書きがどう、という話は、こと町田康に関しては野暮なこと。とにかくこのパンクでシュールな文章に、ひたすら乗っかって楽しむのがよいでしょう。
ちなみに「夫婦茶碗」は織田作之助の「夫婦善哉」、「人間の屑」は太宰治の「人間失格」の、それぞれ町田流本歌取りなのでしょうね。
あと、筒井康隆の解説も素晴らしい。町田康は中高生時代、筒井康隆の作品が大好きで、たくさん読んできたそうですが(「作家の読書道 町田康」より)、ここまで評価されれば本望でしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!