2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧
お家賃ですけど作者:能町みね子東京書籍Amazon 東京は牛込にある築40年以上の「加寿子荘」での生活や、オーエル(著者は「OL」ではなく「オーエル」と書きます)や副業の日々を、淡々と描いたエッセイです。「加寿子荘」というのは著者が勝手に名付けただけ…
サブリミナル・マインド 潜在的人間観のゆくえ (中公新書)作者:下條信輔中央公論新社Amazon 本書のメッセージを一言にまとめると「自分とは、もう一人の他人である」ということになるでしょうか。もう少し具体的に言えば「自分の心は、いくつかのサブシステ…
君と漕ぐ―ながとろ高校カヌー部―(新潮文庫)作者:武田綾乃新潮社Amazon 内容的にヘビーな本が続いたので、気晴らしに爽やか系青春小説を読んでみた。カヌー部の女子高生4人が主人公。2年生で部長の希衣は、勝ちたい気持ちは強いが実力が追いつかず、もう一…
冷い夏、熱い夏(新潮文庫)作者:吉村昭新潮社Amazon 今やインフォームド・コンセントの時代、癌の告知なんて当たり前ですが、本書が書かれた1980年代は、そうではなかったんですね。癌の診断は身内にだけ伝え、本人には隠し通すのが普通。本書の著者、吉村…
殺人者たちの午後作者:トニー・パーカー飛鳥新社Amazon これはすごい本だ。滅多にない一冊だ。収められているのは、10のインタビュー。その相手は、男性もいれば女性も、若者もいれば老人もいる。共通点はただひとつ。殺人を犯し、終身刑となったこと。ちな…
気楽に殺ろうよ: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 2 (2) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)作者:藤子・F・不二雄小学館Amazon 前に読んだ「ミノタウロスの皿」に続く、ダークな味わいのオトナ向け漫画。SF的発想の豊かさは前作同様だが、本書の方がや…
ミノタウロスの皿: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 1 (1) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)作者:藤子・F・不二雄小学館Amazon オトナのための藤子不二雄。「ドラえもん」「オバQ」の絵柄のまま、不思議でちょっと怖い、独特の藤子不二雄ワールドが…
テレーズ・デスケイルゥ(新潮文庫)作者:モーリヤック新潮社Amazon テレーズの夫ベルナールは、暴力を振るうわけでも、酒やギャンブルにハマっているわけでも、浮気しているわけでもない。まあ、世間一般でいえば、「良い夫」ということになるのだろう。と…
ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言作者:長谷川 和夫,猪熊 律子KADOKAWAAmazon 「長谷川和夫」という名前に聞き覚えがある方なら、本書のタイトルは衝撃的だろう。なにしろ長谷川和夫といえば福祉業界…
月のぶどう (ポプラ文庫)作者:はるな, 寺地ポプラ社Amazon いやあ、これは良い話だった。心に沁みました。舞台は月雲市という架空の町にあるワイナリー。そこを切り回してきた母が急逝し、娘の光実は悲しみに暮れるが、双子の弟の歩は泣くことができない。優…
ハコブネ (集英社文庫)作者:村田 沙耶香集英社Amazon 19歳の里帆は、男性とのセックスが辛く、自分の性はなんなのかわからなくなってしまっている。男友達の前では「女を捨てた」ように振る舞うが、男装をしてみてもピンとくるものがなく、なんだか違うもの…
泥棒日記 (新潮文庫)作者:ジャン ジュネ新潮社Amazon 「裏切りと、盗みと、同性愛が、この本の本質的な主題である」(p.256)本書では同性愛を、裏切りや盗みと同列の悪徳に満ちた行為として描いている。この本が書かれた時代はそういうふうに見られていたのだ…
アーヤと魔女作者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ徳間書店Amazon 宮崎吾郎監督のジブリ最新作の原作。この間アニメを観て、原作はどうなっているんだろう、と気になって読んでみた。ちなみにダイアナ・ウィン・ジョーンズの生前に出版された最後の作品でもあ…
母がしんどい【電子特典付】 (角川文庫)作者:田房永子KADOKAWAAmazon いや〜、これは読んででしんどかった。つらかった。母親に、思いつきのようにピアノやバレエに通わされる。貯めていたお年玉は10万円の電子ピアノに使われ、弾かないと「せっかく買ったの…
緋色の研究 (新潮文庫)作者:コナン ドイル新潮社Amazon この間読んだアンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』に出てきたので、久しぶりに読みたくなった。説明は不要だろう。コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを世に送り出した、記念すべき第一作で…
恐竜まみれ :発掘現場は今日も命がけ作者:小林 快次新潮社Amazon 表紙はポップだが、内容はなかなかハード。文字通り「命がけ」の恐竜発掘現場の大変さと楽しさ、恐竜研究の醍醐味をガッツリ伝えてくれる一冊だ。著者の名前は初めて拝見したが、日本の恐竜研…
炎の色 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:ピエール ルメートル,Pierre Lemaitre早川書房Amazon 炎の色 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:ピエール ルメートル,Pierre Lemaitre早川書房Amazon デュマに捧げたというこの作品は、一言でいえば復讐譚だ。そ…
ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯 (幻冬舎新書)作者:原田 マハ幻冬舎Amazon 原田マハの『たゆたえども沈まず』は、良い小説だった。一人の人間としてのゴッホの姿を切々と描いていた。林忠正という実在の日本人をフィーチャーし、その功績を再評…
ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)秋田書店(Akitasyotenn)Amazon 決して「上手い絵」ではない。だが、やたらに「熱い」。その熱量は、手塚治虫の、そしてその周囲に集まった人々が生み出した…
黄泉の犬作者:藤原 新也文藝春秋Amazon 昨日読んだロレンス・ダレルとはまったく別の意味で、これはすさまじい本だった。なんというか、容赦がない。甘さがない。気の抜けたところがない。著者は写真家だ。以前「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」というフ…
黒い本 (中公文庫)作者:ロレンス ダレル中央公論新社Amazon いや〜、この本はしんどい。でも、ハマる。ストーリーらしきものはほとんど無い。南ロンドンのレジナ・ホテルでの堕落した日々がひたすらに綴られ、そこにグレゴリーという人物の日記が唐突に挟み…
輝ける鼻のどんぐ作者:エドワード リア河出書房新社Amazon せなけいこさんの本を読んで、久しぶりに絵本を読みたくなりました。でも、いまさらせなけいこや松谷みよ子、というわけにもなあ・・・と思って、選んだのがこの絵本。エドワード・リアの格調高い文…
ねないこはわたし作者:けいこ, せな文藝春秋Amazon 『ねないこ だれだ』でおなじみの絵本作家、せなけいこさんの自伝的作品です。おなじみの切り絵もたくさん登場して、見ているだけてたのしい一冊になっています。せなさんの最初の絵本は、自分の子どもにに…
その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ東京創元社 『メインテーマは殺人』に続く、元刑事ホーソーンが探偵役の推理小説。そう、この本は「ミステリ」ではなく「推理小説」という古式ゆかしい呼び名…
11人いる! (小学館文庫)作者:萩尾望都小学館Amazon 宇宙大学の入学試験は、10人のチームで、宇宙船内で生き延びること。期間は53日間。しかし、宇宙船にいたのは「11人」だった・・・すごく雑に言ってしまうと『十五少年漂流記』のSF版。短いが、密度は濃い…
陽気なギャングは三つ数えろ (祥伝社文庫)作者:伊坂幸太郎祥伝社Amazon 「陽気なギャング」3作目。なんと前作から9年ぶりの新作とのことですが、テンポや雰囲気は前作そのまま。おなじみの銀行強盗シーンから始まるのは、一瞬で読者を作品世界に引き戻そう…
陽気なギャングの日常と襲撃 (祥伝社文庫)作者:伊坂幸太郎祥伝社Amazon 「年またぎ『陽気なギャング』読破企画」続行中です。今日は2作目の「日常と襲撃」。というわけで、あけましておめでとうございます。2021年ですね。コロナ禍のなか、年が明けてもなか…