自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

2020-01-01から1年間の記事一覧

【2616冊目】伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)作者:伊坂幸太郎祥伝社Amazon 早いものでもう大晦日ですね。例年にない「静かな年末年始」とのことですが、どっちにしても本を読んでいるだけなので、たいして変化はありません。とはいえ、この「本スタグラム」をは…

【2615冊目】岩城宏之『オーケストラの職人たち』

オーケストラの職人たち (文春文庫)作者:岩城 宏之文藝春秋Amazon 岩城宏之のエッセイは面白い。本職が指揮者とは信じられないレベルです。日本エッセイスト・クラブ賞まで受賞しているくらいですからね。本書はその岩城マエストロが、オーケストラの「裏方…

【2614冊目】寺地はるな『ミナトホテルの裏庭には』

ミナトホテルの裏庭には (ポプラ文庫)作者:はるな, 寺地ポプラ社Amazon 今日読んだのは『ビオレタ』に続き寺地はるな。今回の主人公は男性です。祖父に頼まれて「ミナトホテル」の裏庭を開ける鍵を探す芯輔(しんのすけ)を中心に、やはり個性的でどこか達観…

【2613冊目】『蕗谷虹児』

蕗谷虹児 (らんぷの本)作者:蕗谷 虹児河出書房新社Amazon この人をご存知でしょうか。蕗谷虹児と書いて、フキヤコージと読みます。大正から昭和にかけて人気を博した画家であり、詩人です。少女のはかない美しさから、大人の女性の妖艶な美まで、とにかく女…

【2612冊目】望月峯太郎『座敷女』

座敷女 (ヤングマガジンコミックス)作者:望月峯太郎講談社Amazon アパートの隣の部屋のドアを叩く音。気になってドアを開けると、そこにいたのは紙袋をもったロングヘアーの大女。主人公、森ヒロシの悪夢がここから始まる。勝手に合鍵を作って部屋に上がり込…

【2611冊目】マーク・チャンギージー『〈脳と文明〉の暗号』

〈脳と文明〉の暗号: 言語と音楽、驚異の起源 (ハヤカワ文庫NF)作者:マーク・チャンギージー早川書房Amazon タイトルだけでは何の本なのかさっぱりわからないが、原題は「Harnessed」で、これには「自然の力をうまく利用する」というニュアンスがあるという…

【2610冊目】村田沙耶香『コンビニ人間』

コンビニ人間 (文春文庫)作者:村田 沙耶香文藝春秋Amazon 死んだ小鳥を前にみんなが泣いているのに「食べちゃおう」と提案するような、男の子の喧嘩を止めるためにスコップで頭を殴るような、そんな「規格外」の女の子だった古倉恵子が自分の居場所を見つけ…

【2609冊目】沢木耕太郎『深夜特急1 香港・マカオ』

深夜特急1 ー 香港・マカオ〈文字拡大増補新版〉 (新潮文庫)作者:沢木 耕太郎新潮社Amazon 「アパートの部屋を整理し、机の引出しに転がっている一円硬貨までかき集め、千五百ドルのトラベラーズ・チェックと四百ドルの現金を作ると、私は仕事のすべてを放擲…

【2608冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『シャーロック・ホームズ 絹の家』

シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ,駒月 雅子KADOKAWAAmazon まさか21世紀になって、ホームズの「新作長編」が読めるとは。むろん、著者はコナン・ドイルではなくアンソニー・ホロヴィッツだが、著作権管理団体コナン…

【2607冊目】千葉雅也『ツイッター哲学 別のしかたで』

ツイッター哲学: 別のしかたで (河出文庫)作者:千葉雅也河出書房新社Amazon こういう「哲学」もアリなのか、と最初は驚いた。断章形式で書かれた哲学書じたいは珍しくない。本書で紹介されているように、ニーチェもヴァレリーがそうだ。パスカル『パンセ』や…

【2606冊目】寺地はるな『ビオレタ』

ビオレタ (ポプラ文庫)作者:はるな, 寺地ポプラ社Amazon 最近よく名前を見るので気になっていた作家。この本はたまたま見かけて手に取ったけど、後から調べたらデビュー作とのこと。ポプラ社小説新人賞を受賞したらしい。だからというわけじゃないが、とって…

【2605冊目】河合隼雄『「老いる」とはどういうことか』

「老いる」とはどういうことか (講談社+α文庫)作者:河合 隼雄講談社Amazon 見開きごとに1つの記事で自在に綴る、「老い」にまつわるエッセイ集です。新聞連載がベースになっているらしく、それぞれ独立した内容ですが、それがかえって良い方向に作用してい…

【2604冊目】ジャック・カーリイ『デス・コレクターズ』

デス・コレクターズ (文春文庫)作者:ジャック カーリイ文藝春秋Amazon 異様な猟奇殺人の裏にちらつく、30年前の連続殺人犯の影。「彼」マーズデン・へクスキャンプは、信奉者の女性によって、裁判所で射殺されたはずなのに・・・。異常犯罪を専門に扱う部門P…

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』を勝手に読み解いてみます

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:吾峠呼世晴 発売日: 2020/12/04 メディア: Kindle版 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』の勢いが止まりません。 コミックスは累計一億部を突破。映画の興行収入は歴代一位をすでに背中に捉え、コラボやグッズもいたるとこ…

【2603冊目】横山秀夫『ノースライト』

ノースライト作者:横山秀夫新潮社Amazon 横山秀夫といえば警察小説のイメージが強かったので、読んでちょっとびっくりした。主人公は建築士。殺人事件や大きな事故が起きるわけでもない。事件らしい事件といえば、主人公の青瀬が設計した家を発注した家族が…

【2602冊目】岸政彦『100分de名著 ブルデュー ディスタンクシオン』

ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年12月 (NHK100分de名著)作者:岸 政彦NHK出版Amazon こないだの月曜日、なんの気無しに見たEテレ「100分de名著」が思いのほか面白く、あわててテキストを購入しました。とくに「自分が好きなものや趣味は、自分で選ん…

【2601冊目】高橋ユキ『つけびの村』

つけびの村作者:高橋ユキ晶文社Amazon 2013年、山口県の山間の集落で起きた5人の殺害、そして放火を追ったノンフィクションです。被疑者の保見光成(ワタル)は、村人に嫌がらせをされている、悪口を言われているという「妄想」に基づき事件を起こしたとさ…

【2600冊目】姫野カオルコ『受難』

受難 (文春文庫)作者:姫野 カオルコ文藝春秋Amazon なんというか、まあ、ものすごい作品であった。男にとんと縁のない修道院育ちの「フランチェス子」。話しながら触れるだけで男を萎えさせ、バイブさえ破壊する「異能」の持ち主のアソコに、なんと人面瘡が…

【2599冊目】伊藤亜紗『手の倫理』

手の倫理 (講談社選書メチエ)作者:伊藤亜紗講談社Amazon 「さわる」と「ふれる」の違いを考えるところから、この本ははじまります。「傷口にさわる」というといかにも痛そうだけど、「傷口にふれる」だとそうでもない。愛する人は「ふれる」けど痴漢は「さわ…

【2598冊目】庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』

赤頭巾ちゃん気をつけて (新潮文庫)作者:庄司 薫新潮社Amazon 1969年芥川賞受賞作。学園紛争とかゲバ棒とかマオジューシとかも出てきて時代を感じるが、しかしこの本の個性そのものは、少しも古臭くない。全編が「ぼく」の一人語りで、そのため村上春樹に影…

【2597冊目】千葉徳爾『日本人はなぜ切腹するのか』

日本人はなぜ切腹するのか作者:千葉 徳爾東京堂出版Amazon 絶版のため図書館で借りたが、これは面白い。どこかで復刊してはくれないか。面白いが、痛い本でもある。とにかく「腹のかっさばき方」がいろいろ出てくる。一文字に十文字、途中でつっかえたらどう…

【2596冊目】穂村弘『はじめての短歌』

はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)作者:穂村 弘河出書房新社Amazon 「空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態」「空き巣でも入ったのかと思うほど私の部屋は散らかっている」いきなり2つの短歌を並べましたが、最初のものが平岡あみさん…

【2595冊目】コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』

地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)作者:コルソン ホワイトヘッド早川書房Amazon アメリカ南北戦争の前、奴隷制が合法だった時代が舞台。主人公のコーラは3世代前からの奴隷で、ジョージアの農場で働かされているが、あまりに過酷な環境に耐えかね、「地下鉄道」の…

【2594冊目】坂口恭平『徘徊タクシー』

徘徊タクシー (新潮文庫)作者:恭平, 坂口新潮社Amazon 認知症の人の「徘徊」というのは、本当に徘徊なんだろうか、そこには何か別の意味や目的地があるのではないか。だったら、そういうお年寄りを乗せて時空を超える「徘徊タクシー」をやろう、というのが表…

【2593冊目】篠田節子『夏の災厄』

夏の災厄 (角川文庫)作者:篠田 節子KADOKAWAAmazon 20年ほど前に読んだ本。なんとも懐かしいが、この本をこんなかたちで思い出すことになろうとは。看護婦、保健婦という呼び方、厚生省という官庁名、今は新法に生まれ変わった伝染病予防法、MMRやインフルエ…

【2592冊目】 アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』

メインテーマは殺人 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ東京創元社Amazon この本には驚いた。まるでアガサ・クリスティかエラリイ・クイーンの新刊を読んでいるみたい。しかも舞台はきっちり現代になっている…

【2591冊目】 前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)作者:前野 ウルド 浩太郎光文社Amazon 書店で表紙を見たときは、ちょっとヤバい人なんじゃないかと思ったけど、読んでみたら、わりとまっとうな「バッタ研究記」でした。ふざけて見えるけど、この著者はけっこうマジメ…

【2590冊目】ジャン=フィリップ・トゥーサン『ためらい』

ためらい (集英社文庫)作者:J・P・トゥーサン集英社Amazon 「ぼく」は、生後8ヶ月の赤ちゃんを連れて、海辺の村サスエロにやってきます。そこに住むビアッジを訪ねようとしているらしいのですが、なかなか家のベルを鳴らさず、なんだかずっとためらっている…

【2589冊目】マーク・ハッドン『夜中に犬に起こった奇妙な事件』

夜中に犬に起こった奇妙な事件 (ハヤカワepi文庫)作者:マーク・ハッドン早川書房Amazon 「ぼく」は特別支援学校に通う15歳の少年だ。数学が得意で、今度数学の上級試験を受ける。だからこの本の章番号は全部素数になっている。人の感情を読み取るのは苦手だ…

【2588冊目】河合隼雄・村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』

村上春樹、河合隼雄に会いにいく(新潮文庫)作者:河合 隼雄,村上 春樹新潮社Amazon 刊行は1996年。対談の時期は1995年あたりなので、阪神淡路大震災、オウム真理教の事件などが起きた頃だ。直接そのことに触れた箇所は少ないが、今読むと、全体を通して事件…