自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

謎・恐怖・幻想

【2652冊目】レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』

ヌヌ 完璧なベビーシッター (集英社文庫)作者:レイラ・スリマニ集英社Amazon 「ヌヌ」とは、乳母を意味するフランス語「ヌーリス」(nourrice)の子ども言葉とのこと。パパ、ママみたいなものだろうか。ただ、この言葉自体はとても訳しにくい。日本語で、「…

【2647冊目】中山七里『ヒポクラテスの誓い』

ヒポクラテスの誓い 法医学ミステリー「ヒポクラテス」 (祥伝社文庫)作者:中山七里祥伝社Amazon 中山七里の法医学サスペンスです。この手の本やドラマは今やたくさん出ていますね。日本では上野正彦『死体は語る』が火付け役ですが、海外ではなんといっても…

【2638冊目】『藤子・F・不二雄 異色短編集2 勝手に殺ろうよ』

気楽に殺ろうよ: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 2 (2) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)作者:藤子・F・不二雄小学館Amazon 前に読んだ「ミノタウロスの皿」に続く、ダークな味わいのオトナ向け漫画。SF的発想の豊かさは前作同様だが、本書の方がや…

【2637冊目】藤子・F・不二雄『ミノタウロスの皿』

ミノタウロスの皿: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 1 (1) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)作者:藤子・F・不二雄小学館Amazon オトナのための藤子不二雄。「ドラえもん」「オバQ」の絵柄のまま、不思議でちょっと怖い、独特の藤子不二雄ワールドが…

【2629冊目】コナン・ドイル『緋色の研究』

緋色の研究 (新潮文庫)作者:コナン ドイル新潮社Amazon この間読んだアンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』に出てきたので、久しぶりに読みたくなった。説明は不要だろう。コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを世に送り出した、記念すべき第一作で…

【2627冊目】ピエール・ルメートル『炎の色』

炎の色 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:ピエール ルメートル,Pierre Lemaitre早川書房Amazon 炎の色 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:ピエール ルメートル,Pierre Lemaitre早川書房Amazon デュマに捧げたというこの作品は、一言でいえば復讐譚だ。そ…

【2622冊目】エドワード・リア、エドワード・ゴーリー『輝ける鼻のどんぐ』

輝ける鼻のどんぐ作者:エドワード リア河出書房新社Amazon せなけいこさんの本を読んで、久しぶりに絵本を読みたくなりました。でも、いまさらせなけいこや松谷みよ子、というわけにもなあ・・・と思って、選んだのがこの絵本。エドワード・リアの格調高い文…

【2619冊目】萩尾望都『11人いる!』

11人いる! (小学館文庫)作者:萩尾望都小学館Amazon 宇宙大学の入学試験は、10人のチームで、宇宙船内で生き延びること。期間は53日間。しかし、宇宙船にいたのは「11人」だった・・・すごく雑に言ってしまうと『十五少年漂流記』のSF版。短いが、密度は濃い…

【2612冊目】望月峯太郎『座敷女』

座敷女 (ヤングマガジンコミックス)作者:望月峯太郎講談社Amazon アパートの隣の部屋のドアを叩く音。気になってドアを開けると、そこにいたのは紙袋をもったロングヘアーの大女。主人公、森ヒロシの悪夢がここから始まる。勝手に合鍵を作って部屋に上がり込…

【2608冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『シャーロック・ホームズ 絹の家』

シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ,駒月 雅子KADOKAWAAmazon まさか21世紀になって、ホームズの「新作長編」が読めるとは。むろん、著者はコナン・ドイルではなくアンソニー・ホロヴィッツだが、著作権管理団体コナン…

【2604冊目】ジャック・カーリイ『デス・コレクターズ』

デス・コレクターズ (文春文庫)作者:ジャック カーリイ文藝春秋Amazon 異様な猟奇殺人の裏にちらつく、30年前の連続殺人犯の影。「彼」マーズデン・へクスキャンプは、信奉者の女性によって、裁判所で射殺されたはずなのに・・・。異常犯罪を専門に扱う部門P…

【2593冊目】篠田節子『夏の災厄』

夏の災厄 (角川文庫)作者:篠田 節子KADOKAWAAmazon 20年ほど前に読んだ本。なんとも懐かしいが、この本をこんなかたちで思い出すことになろうとは。看護婦、保健婦という呼び方、厚生省という官庁名、今は新法に生まれ変わった伝染病予防法、MMRやインフルエ…

【2592冊目】 アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』

メインテーマは殺人 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ東京創元社Amazon この本には驚いた。まるでアガサ・クリスティかエラリイ・クイーンの新刊を読んでいるみたい。しかも舞台はきっちり現代になっている…

【2585冊目】米澤穂信『氷菓』

氷菓 「古典部」シリーズ (角川文庫)作者:米澤 穂信KADOKAWAAmazon 全体的には、小説というよりアニメのノベライズ、といった印象。ポップな展開、わかりやすくキャラの立った登場人物、そしてシンプルだけどそこそこ意外性のある謎解き。たいへんに読みやす…

【2582冊目】ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』

黄色い部屋の謎【平岡敦訳】 (創元推理文庫)作者:ガストン・ルルー東京創元社Amazon 小学校高学年あたりで一度読んだきりだった。たぶんポプラ社あたりの児童向け翻案モノだと思う。とにかく怖かった記憶しかない。「黄色い部屋」というシチュエーション。羊…

【2576冊目】『短編画廊』

短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション) 作者:ローレンス・ブロック,スティーヴン・キング,ジェフリー・ディーヴァー,マイクル・コナリー,リー・チャイルド,ジョー・R・ランズデール,ジョイス・キャロル・オーツ,ロバート・オレ…

【2572冊目】星新一『ボッコちゃん』

ボッコちゃん(新潮文庫) 作者:星 新一 発売日: 2013/03/01 メディア: Kindle版 こないだnoteにもアップしたが、久しぶりに読み返したので、コチラにも。中身はほぼ一緒です。 読んだのは中学生のころだっただろうか。当時はほとんどの本を図書館で借りてい…

【2560冊目】ピエール・ルメートル『監禁面接』

監禁面接 作者:ルメートル,ピエール 発売日: 2018/08/30 メディア: 単行本 企業の人事部長まで務めたアラン。50代でリストラされ、再就職の望みもかなわないまま、はや4年。アルバイトで食いつなぎつつエントリーした一流企業で、思いがけず最終試験に残…

【2557冊目】小松左京『題未定』

題未定怪奇SF (文春文庫) 作者:小松 左京 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 ヘンな小説である。連載のタイトルが決まらないと悩んでいる作家(著者自身)のところに手紙が届くのだが、それがどれも「連載されている小説」についての感想なのである。…

【2546冊目】花輪莞爾『悪夢小劇場』

悪夢小劇場 (新潮文庫) 作者:花輪 莞爾 メディア: 文庫 この作家のことは全然、名前すら知らなかった。じんわりと漂うブラックユーモア。現実と非現実のあわいに漂うシュールな感覚。あえて似ている作家を思いつくまま挙げれば、筒井康隆、井上夢人、サキあ…

【2544冊目】道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫) 作者:道尾秀介 発売日: 2012/07/01 メディア: Kindle版 後から考えるとけっこう陰惨で救いのない話なのだが、その割に読後感は妙にさわやかだ。だがそのさわやかさは、どこか病んでいる。それがかえって、じんわりと怖い。ち…

【2525冊目】ミシェル・マクナマラ『黄金州の殺人鬼』

黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-9) 作者:ミシェル・マクナマラ 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) ある意味、フィクションでは絶対にありえない一冊だ。事実だけがもつ重み…

【2514冊目】吉村昭『透明標本 吉村昭自選初期短篇集2』

透明標本-吉村昭自選初期短篇集II (中公文庫) 作者:吉村 昭 発売日: 2018/10/23 メディア: 文庫 自選初期短篇集として編まれた2冊のうちの1冊。もう一方の『少女架刑』のレビューはコチラ 吉村昭といえば歴史モノや、実際の事件をもとにした作品が多い印象…

【2510冊目】井上ひさし『十二人の手紙』

十二人の手紙 (中公文庫) 作者:ひさし, 井上 発売日: 2009/01/25 メディア: 文庫 11の書簡形式の短編が、これも書簡による「プロローグ」と「エピローグ」に挟まれている。個々の短編は独立しているが、エピローグで思わぬつながりを見せ、同時にプロロー…

【2476冊目】手塚治虫『鉄の旋律』

鉄の旋律―The best 3 stories by Osamu Tezuka (秋田文庫) 作者:手塚 治虫 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 1994/03/01 メディア: 文庫 「黒手塚」全開の短編3本を収録した一冊。手塚治虫のダークサイド。 「鉄の旋律」は、冒頭こそゴッドファーザーの漫…

【2475冊目】福田ますみ『モンスターマザー』

モンスターマザー: ―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い― (新潮文庫) 作者:福田 ますみ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/01/27 メディア: 文庫 いやあ、怖い本だった。読んでいて思い出したのは『黒い家』だが、あちらは小説。本書はノン…

【2457冊目】ジェームズ・M・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』

郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫) 作者:ジェームズ・M. ケイン 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/08/28 メディア: 文庫 映画はずっと前に見たような気がするが、あまりよく覚えていない。初めて原作を読んで驚いた。ものすごく面白い。浮気した人…

【2453冊目】米澤穂信『ボトルネック』

ボトルネック (新潮文庫) 作者:米澤 穂信 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/09/29 メディア: 文庫 一部ネタバレがありますので、ご注意を。パラレルワールドとミステリが融合した物語だが、問題はもう一つの世界に「自分」がいないこと。もともとの世界…

【2452冊目】京極夏彦『鬼談』

鬼談 (角川文庫) 作者:京極 夏彦 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/02/24 メディア: 文庫 『幽談』『冥談』『眩談』『旧談』に続く、京極夏彦の怪談シリーズらしい。「らしい」というのは、実はこのシリーズ初読だから。というか、京極夏彦自体がずい…

【2449冊目】デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 作者:デイヴィッド・ゴードン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2013/01/25 メディア: 文庫 ペンネームでチープなミステリ、ポルノまがいのSF、ヴァンパイア小説を書き散らし生計を立てている「二流小説家」ハリ…