hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2629冊目】コナン・ドイル『緋色の研究』


この間読んだアンソニーホロヴィッツ『その裁きは死』に出てきたので、久しぶりに読みたくなった。説明は不要だろう。コナン・ドイルシャーロック・ホームズを世に送り出した、記念すべき第一作である。


空家で発見された外傷のない死体、壁に書かれた「RACHE」という文字、そして第二の事件。畳みかけるようなホームズの推理も鮮やかで、最初からその醍醐味が味わえる。


最初に読んだのは中学生の頃だったか。その時びっくりしたのが、犯人逮捕後に登場する長大な過去譚だ。舞台が霧深きロンドンからいきなりアメリカの大砂漠に代わり、事件の背景が別の物語として語られる。多くの推理小説では簡単に説明される程度であることが多い「動機」の部分を、ドイルは本編の半分近くを使って描いているのである。これは見方によっては、後年の社会派ミステリーの先駆とも思える(もっとも、内容はモルモン教への偏見と誤解に満ちたもので、到底「社会派」とはいいがたい)。


まあ、このあたりが、本書がホームズ第一作ながら、ミステリ・ファンにはやや敬遠されがちなゆえんではあるのだが、それでも犯人の職業設定などは読者の盲点をうまく突いていて独創的。それになんといっても、ホームズという強烈なキャラクターの造形が、第一作からほとんど完成されているのに驚かされる。「ベイカー街非正規隊」もいきなりの登場だが、こちらはホロヴィッツの『絹の家』を読んだ後だと、ちょっとフクザツだった。