【2638冊目】『藤子・F・不二雄 異色短編集2 勝手に殺ろうよ』
前に読んだ「ミノタウロスの皿」に続く、ダークな味わいのオトナ向け漫画。
SF的発想の豊かさは前作同様だが、本書の方がややアダルト度が高く、ちょっと子供には読ませにくい。特にF先生の原案に小森麻美が絵をつけたSF少女漫画風味の「サンプルAと B」は、性器の結合図まででてきてびっくり。ちなみに本作は「宇宙人にとって『ロメオとジュリエット』がどう見えるか」を描いた作品だ。
個人的な好みで言えば、「換身」と「気楽に殺ろうよ」がおもしろかった。「換身」は、最近では『君の名は』でも見られたような古典的な「入れ替わりモノ」だが、3人が次々に入れ替わり、めまぐるしく話が動くプロットが見事。「気楽に殺ろうよ」は、食欲と性欲の位置付けが逆転したパラレルワールドに迷い込んだ男の話。食欲は隠すべきもの、性欲はオープンにするのが当たり前という世界は、なんだかどこかで読んだ気もするが(星新一だったかな)、さらにこの世界では殺人もまた合法なのだ。そこで主人公は気に食わない上司を殺そうとナイフをもって出勤するが・・・・・・
ラストの「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」は、「ミノタウロスの皿」にも入っていたアンチ・スーパーヒーローもの。「正義」とか「善」の押し付けに対する、F先生の強烈な違和感と嫌悪感が感じられる作品だ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!