hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2637冊目】藤子・F・不二雄『ミノタウロスの皿』


オトナのための藤子不二雄。「ドラえもん」「オバQ」の絵柄のまま、不思議でちょっと怖い、独特の藤子不二雄ワールドが展開する。


40年以上前の作品だが、SF的発想は現代にも十分通じるものがある。「自分会議」のタイムパラドックスや、「一千年後の再会」の時空ラブロマンスなど、いずれも鮮やかだ。


考えさせられる作品も多い。正義の危うさを描いた「わが子・スーパーマン」は、なぜ単純なヒーローものを藤子不二雄が描かなかったのかというひとつの答えになっている(『パーマン』はある意味アンチ・ヒーローものに近い)し、『ミノタウロスの皿』での人と牛が入れ替わった世界は、『ガリヴァー旅行記』のヤフーとフウイヌムの国より一歩先を行っている。


ミノタウロスの皿」と並んで忘れがたい作品が「劇画・オバQ」だ。大人になった正ちゃんやゴジラがQちゃんと再会するというもの。劇画タッチの藤子・F・不二雄も面白いが、「大人になってしまった子どもたち」のところからQちゃんが去っていくシーンがなんとも切ない。いわば藤子不二雄版ピーター・パンであろう。


冒頭に「大人のための」と書いたが、実はドラえもんオバQの中にも、本書で描かれているようなブラックで「厳しい」要素は、しっかりと織り込まれている。本書はその「濃度」がかなり高めになっている、いわばカルピスの原液のようなもの。子どもの頃から、私たちはそれが薄められたモノを飲んで育ってきたのである。そう考えると、やはり藤子不二雄は偉大だったと思う。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!