自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2475冊目】福田ますみ『モンスターマザー』

 

モンスターマザー: ―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い― (新潮文庫)
 

 

いやあ、怖い本だった。読んでいて思い出したのは『黒い家』だが、あちらは小説。本書はノンフィクションである。

いわゆるハードクレーマーに遭遇することは、私たちの職場であれば多かれ少なかれ避けられないが、本書に出てくる高山さおりほどの凄まじいクレーマーには、さすがにお目にかかったことがない。

長野県の丸子工業高校の1年生、高山裕太が自殺した。当初は所属していたバレー部のいじめが原因とされ、母親はいじめの事実を認めろ、謝罪しろと執拗に迫る。さらに、人権派として知られる某弁護士が、なんと校長を殺人罪刑事告訴するというとんでもない展開に。しかし、本当にとんでもないのはその後だ。学校からバレー部の保護者にまで及ぶ執拗なさおりのクレームに加え、一部マスコミの報道もあって追いつめられていく学校側。だが、真実を明らかにしようと反撃に転じるや否や、思いもかけない事実が次々と明らかになる。

加害者としてクレームや誹謗中傷に悩まされた学校やバレー部の保護者、生徒も、確かに被害者だった。だが、最大の被害者はまぎれもなく裕太君自身である。90分かけて学校に通いながら母親の代わりに家事を担い、父親に対する母親のDVを目の当たりにし、学校を攻撃するため母の意のままに手紙を書かされた。中でも「自殺」の真相が明らかになる瞬間は、あまりの残酷さと悲痛さに、読んでいて心が痛くなった。ここまで子どもの心を追い込むことが、果たして人に許されているのだろうか。

それにしても、高山さおりもとんでもないが、この母親一人ではこれほどのコトは起こせなかっただろう。その後押しをした弁護士の存在を、私たちは忘れてはならないと思う。その名前や、彼がどんなことをしたのか、どんな弁護士なのかを知りたい方は、ぜひ本書を読まれるとよい。

最後に、自治体職員のみなさん。まっとうに仕事をしているだけで、いつモンスタークレーマーやモンスター弁護士に個人が訴えられるかわからない世の中ですから、自治体職員向けの賠償責任保険には加入しておきましょうね。

 

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)