【2619冊目】萩尾望都『11人いる!』
宇宙大学の入学試験は、10人のチームで、宇宙船内で生き延びること。期間は53日間。しかし、宇宙船にいたのは「11人」だった・・・
すごく雑に言ってしまうと『十五少年漂流記』のSF版。短いが、密度は濃い。誰が「11人目」なのかをめぐる疑惑と、次々に起こるトラブルのなかで、極限状態だからこそ見えてくる人の本性を容赦なく描く。
「両性体」という存在もおもしろい。これは、最初は性別が未分化で、成長すると男や女になっていくというものだ(一部の生物で実際に存在するとのこと)。これはこれでいろいろ大変だろうが、われわれの社会も後天的に性別を選べれば、まったく違ったものになりそうだ(ちなみにフロルによると、社会の平和を保つには「男性1:女性5」の比率が一番良いとのこと)。内容は違うが、ル=グウィンの『闇の左手』を思い出した。
タイトルはホラーっぽいが、謎はすべて合理的に解決され、未来に向けて明るい余韻が残る。私にとって、少女漫画の概念を一変させてくれた一冊。特に心理描写の緻密さは、少年漫画、青年漫画は遠く及ばない。