自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2647冊目】中山七里『ヒポクラテスの誓い』


中山七里の法医学サスペンスです。この手の本やドラマは今やたくさん出ていますね。日本では上野正彦『死体は語る』が火付け役ですが、海外ではなんといってもパトリシア・コーンウェルの検死官シリーズでしょう。この手のミステリーが女性主人公ばかりなのも、コーンウェルの創造したケイ・スカーペッタ検死官の印象が強かったためでしょうか。


さて、本書の主人公は研修医の真琴ですが、なんといっても強烈なのは指導医にあたる光崎です。その狷介で偏屈な性格と正確無比なメスさばきは、さながら老年版かつ解剖専門のブラック・ジャックといったところでしょうか。光崎のキャラが立ちすぎてるので、真琴やキャシー、古手川などの登場人物はすっかり霞んでしまっています。


5つの短編で構成されていますが、どれも法医学ならではの謎解きがよくできています。特に「母と娘」は、急逝した娘の解剖に反対する母という、ある意味たいへん「まっとう」な存在を描きつつ、その裏側にとんでもない真実を隠した好短編です。医師としての真琴を大きく成長させた事件でもあり、ひとつの成長譚としても読み応え十分でした。


本書はシリーズ化されているようなので、そのうち続きも読んでみたいと感じました。あと、光崎らが最初に登場したという『連続殺人鬼カエル男』も気になります(本書には名前しか出てこない渡瀬刑事が登場するというのもポイントです)。どっちを先に読むか、悩ましいところです。あ、それとも久しぶりに、コーンウェルの検死官シリーズに戻ってみるのも一手でしょうか。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!