【2453冊目】米澤穂信『ボトルネック』
一部ネタバレがありますので、ご注意を。
パラレルワールドとミステリが融合した物語だが、問題はもう一つの世界に「自分」がいないこと。もともとの世界ではいなかった姉が、ここでは自分の代わりに存在する。そのため主人公は、「自分がいないことで、世界はどう変わるか」を目の当たりにさせられる。
痛ましいのは、自分の代わりに姉がいることで、いろんなことが「うまくいっている」ことだ。中でも、元の世界では亡くなっているはずの、思いを寄せる相手が、新たな世界では姉と仲良くなっており、しかも性格まで快活になっている。
ミステリの謎解きとポップでスピーディな展開のせいであまり気にならないが、よく考えると、実に救いのない話なのである。ひとつくらい「自分がいる世界」のほうがマシな要素があればまだいいのだが