hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2627冊目】ピエール・ルメートル『炎の色』

デュマに捧げたというこの作品は、一言でいえば復讐譚だ。そして、「脱獄」と「復讐」を扱った小説ほど面白いものはない。本書は「脱獄」こそ出てこないが、復讐のほうは胸焼けがするほどたっぷり登場する。


主人公マドレーヌは、裕福な実業家マルセル・ペリクールの娘である。物語はそのマルセルの葬儀のシーンで始まる。その日、マドレーヌの7歳の息子ポールは、全員が見守る中、3階の窓から転落、車椅子が必要な身となってしまう。


巨額の遺産を相続したものの、父の死と息子の障害に打ちひしがれるマドレーヌ。そこに襲いかかるのが父の部下であったギュスターヴや叔父のシャルルである。彼らに嵌められて財産も住む家も失い、その上ポールの転落に関する衝撃的な事実を知る。そして、第二次対戦前のフランスを舞台に、マドレーヌの復讐劇が幕を開けるのである。


前半で金持ちの娘で世間知らずだったマドレーヌが、いささか唐突な印象はあるが、4年の歳月を経て、後半では鬼のような復讐者に変貌する。その周到に仕組まれた復讐の罠は、とにかく緻密で圧倒的。さらに、背景として描かれるナチスの進出や戦争の影が、物語に奥行きを与えている。


復讐が始まってからの物語はやや一本調子だが、それでもマドレーヌの仕掛けた罠が何なのかが気になって、ページを繰る手が止まらない。ちなみに『天国でまた会おう』の続編とのことだが、内容的にはまったく独立している。また、『その女アレックス』などで見られたグロ風味はほとんど登場しないのでご安心を。