自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2665冊目】五十嵐大介『魔女 第1集』

魔女 (IKKI COMIX)作者:五十嵐大介小学館Amazon イスタンブールを舞台に、糸を紡ぐ遊牧民の娘シラルと、バザールの地下に眠る怨敵に呼びかけるニコラの「二人の魔女」を描く「SPINDLE」。熱帯雨林に住む呪術師クマリと、開発のためやってくる兵士たちを描く…

【2664冊目】野矢茂樹『語りえぬものを語る』

語りえぬものを語る (講談社学術文庫)作者:野矢茂樹講談社Amazon 「語りえぬものを語る」。ずいぶん奇妙なタイトルです。だいたい「語りえない」=「語ることができない」ものを「語る」とは何事でしょうか。タイトル自体が矛盾しています。不可能です。しか…

【2663冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ東京創元社Amazon カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)作者:アンソニー・ホロヴィッツ東京創元社Amazon アンソニー・ホロヴィッツの名を知らしめた一冊にして、前代未聞の「ダブル・…

【2662冊目】寺山修司・宇野亜喜良『壜の中の鳥』

壜の中の鳥作者:寺山 修司アートンAmazon 「なぞなぞ たてろ 同じ鳥でも飛ばないとりはなあんだ? それはひとり という鳥だ」寺山修司の文章と、宇野亜喜良の絵がコラボした一冊です。挿絵ではあるのですが、叙情と叙情が響き合って、なんともふしぎな世界を…

【2661冊目】島田昌和『渋沢栄一』

渋沢栄一――社会企業家の先駆者 (岩波新書)作者:島田 昌和岩波書店Amazon サブタイトルに「社会企業家の先駆者」とあったので、ソーシャルアントレプレナーとしての渋沢栄一について知ることができるのではないかと考え、手に取りました。渋沢栄一は社会福祉…

【2660冊目】高野文子『るきさん』

るきさん (ちくま文庫)作者:高野 文子筑摩書房Amazon 「るきさん」はたぶん30代くらいの、一人暮らしの女性です。仕事は在宅ワークの医療事務で、1ヶ月分の仕事が1週間で終わってしまうので、あとは図書館に行ったり、郵便局に行ったり(切手集めが趣味ら…

【2659冊目】ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』

白の闇 (河出文庫)作者:ジョゼ・サラマーゴ河出書房新社Amazon これは、すごい。とんでもない小説だ。突然目の前が真っ白になり失明する、謎の感染症。政府は、目が見えなくなった人々を、かつて精神病院だった建物に収容する。外には銃を構えた兵士。食事が…

【2658冊目】南木佳士『からだのままに』

からだのままに (文春文庫)作者:南木 佳士文藝春秋Amazon 医師であり、作家でもある著者が、これまでの半生を振り返って綴るエッセイです。特に派手だったり面白い話があるというわけではないのですが、どのエッセイも、じんわりと身体に沁み込むような味わ…

【2657冊目】ジェフリー・ディーヴァー『限界点』

限界点 上 (文春文庫)作者:ジェフリー・ディーヴァー文藝春秋Amazon 限界点 下 (文春文庫)作者:ディーヴァー,ジェフリー文藝春秋Amazon プロのボディーガードを主人公にした、ディーヴァーのノンシリーズ長編。人を探し、拷問して情報を引き出す「調べ屋」と…

【2656冊目】萩原秀三郎『目でみる民俗神 山と森の神』

山と森の神 (目でみる民俗神)東京美術Amazon 今の日本でもっとも見えづらくなっているのは、この本に載っている写真のようなことではないか。そう思いながら読み、眺めていた。著者が写真に撮り、本書に収めたのは、日本各地で行われているさまざまな祭りや…

【2655冊目】ニコ・ニコルソン、佐藤眞一『マンガ認知症』

マンガ 認知症 (ちくま新書)作者:ニコ・ニコルソン,佐藤眞一筑摩書房Amazon マンガだからといって、あなどってはいけません。この本はすばらしい。特に、認知症の家族を介護している方は必読です。なぜ、同じことを何度も聞くのか。なぜ、夕方になると「家に…

【2654冊目】小堀鷗一郎『死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者』

死を生きた人びと――訪問診療医と355人の患者作者:小堀 鷗一郎みすず書房Amazon 著者は「訪問診療医」。病院やクリニックで患者を診るのではなく、みずから患者の家に赴く医者だ。中でも「在宅看取り」に積極的に取り組んできた。8割の人が病院で亡くなってい…

【2653冊目】乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

イニシエーション・ラブ (文春文庫)作者:乾 くるみ文藝春秋Amazon 「必ず2回読みたくなる」との触れ込みは、ダテではありません。確かにこれは、2回読まなければ見えてこない、驚きの仕掛けが隠された小説です。いや、隠された、というのは正確ではありま…

【2652冊目】レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』

ヌヌ 完璧なベビーシッター (集英社文庫)作者:レイラ・スリマニ集英社Amazon 「ヌヌ」とは、乳母を意味するフランス語「ヌーリス」(nourrice)の子ども言葉とのこと。パパ、ママみたいなものだろうか。ただ、この言葉自体はとても訳しにくい。日本語で、「…

【2651冊目】デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』

ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論作者:デヴィッド・グレーバー岩波書店Amazon コロナ禍で注目された人々といえば「エッセンシャル・ワーカー」でしょう。医療従事者、介護職員、ごみ収集員、トラックドライバーなど、社会機能の維持に不可欠…

【2650冊目】河野裕『いなくなれ、群青』

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)作者:河野 裕新潮社Amazon 公園を横切っていたはずの「僕」は、気がつくと「階段島」にいた。ここから出るためには、どうやら「失くしたもの」を見つけなければならないらしい。そして、そこで「僕」は、真辺由宇という少女に…

【2649冊目】ジェレミー・テイラー『人類の進化が病を生んだ』

人類の進化が病を生んだ作者:テイラー,ジェレミー河出書房新社Amazon 人間の病気や人体の特徴について「進化」の観点から解き明かした一冊です。一般向けの本とはいえ、中身はなかなかハード。ボリュームはそれなりだし、専門用語もバンバン出てきます。ただ…

【2648冊目】ペスタロッチ『隠者の夕暮/シュタンツだより』

隠者の夕暮・シュタンツだより (1949年) (岩波文庫)作者:ペスタロッチAmazon ペスタロッチ(本書では「ペスタロッチー」)をご存知でしょうか。18世紀から19世紀にかけて、孤児院を作り、民衆教育に生涯を捧げた人物です。フレーベルやコルチャックにも影響…

【2647冊目】中山七里『ヒポクラテスの誓い』

ヒポクラテスの誓い 法医学ミステリー「ヒポクラテス」 (祥伝社文庫)作者:中山七里祥伝社Amazon 中山七里の法医学サスペンスです。この手の本やドラマは今やたくさん出ていますね。日本では上野正彦『死体は語る』が火付け役ですが、海外ではなんといっても…

【2646冊目】井上ひさし『井上ひさしの日本語相談』

井上ひさしの日本語相談 (朝日文庫)作者:井上 ひさし朝日新聞出版Amazon 読者からのさまざまな質問に井上ひさしが回答する、というスタイルの一冊。回答も素晴らしいが、質問がなかなか良いところ、日本語にとって痛いところを突いているので、こちらを見て…

【2645冊目】姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』

彼女は頭が悪いから (文春文庫 ひ 14-4)作者:姫野 カオルコ文藝春秋Amazon 2016年に起きた、東大生らによる強制わいせつ事件をもとに書かれた小説です。とはいえ、興味本位の内容ではありません。本書の大半は、事件に至るまでの、加害者の一人と被害者の女…

【2644冊目】西原理恵子『まあじゃんほうろうき』

まあじゃんほうろうき (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)作者:西原 理恵子竹書房Amazon まあじゃんほうろうき (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)作者:西原 理恵子竹書房Amazon 私の西原理恵子デビューはこの漫画でした。その後もいろいろ読んできまし…

【2643冊目】能町みね子『お家賃ですけど』

お家賃ですけど作者:能町みね子東京書籍Amazon 東京は牛込にある築40年以上の「加寿子荘」での生活や、オーエル(著者は「OL」ではなく「オーエル」と書きます)や副業の日々を、淡々と描いたエッセイです。「加寿子荘」というのは著者が勝手に名付けただけ…

【2642冊目】下條信輔『サブリミナル・マインド』

サブリミナル・マインド 潜在的人間観のゆくえ (中公新書)作者:下條信輔中央公論新社Amazon 本書のメッセージを一言にまとめると「自分とは、もう一人の他人である」ということになるでしょうか。もう少し具体的に言えば「自分の心は、いくつかのサブシステ…

【2641冊目】 武田綾乃『君と漕ぐ』

君と漕ぐ―ながとろ高校カヌー部―(新潮文庫)作者:武田綾乃新潮社Amazon 内容的にヘビーな本が続いたので、気晴らしに爽やか系青春小説を読んでみた。カヌー部の女子高生4人が主人公。2年生で部長の希衣は、勝ちたい気持ちは強いが実力が追いつかず、もう一…

【2640冊目】吉村昭『冷い夏、熱い夏』

冷い夏、熱い夏(新潮文庫)作者:吉村昭新潮社Amazon 今やインフォームド・コンセントの時代、癌の告知なんて当たり前ですが、本書が書かれた1980年代は、そうではなかったんですね。癌の診断は身内にだけ伝え、本人には隠し通すのが普通。本書の著者、吉村…

【2639冊目】トニー・パーカー『殺人者たちの午後』

殺人者たちの午後作者:トニー・パーカー飛鳥新社Amazon これはすごい本だ。滅多にない一冊だ。収められているのは、10のインタビュー。その相手は、男性もいれば女性も、若者もいれば老人もいる。共通点はただひとつ。殺人を犯し、終身刑となったこと。ちな…

【2638冊目】『藤子・F・不二雄 異色短編集2 勝手に殺ろうよ』

気楽に殺ろうよ: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 2 (2) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)作者:藤子・F・不二雄小学館Amazon 前に読んだ「ミノタウロスの皿」に続く、ダークな味わいのオトナ向け漫画。SF的発想の豊かさは前作同様だが、本書の方がや…

【2637冊目】藤子・F・不二雄『ミノタウロスの皿』

ミノタウロスの皿: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 1 (1) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)作者:藤子・F・不二雄小学館Amazon オトナのための藤子不二雄。「ドラえもん」「オバQ」の絵柄のまま、不思議でちょっと怖い、独特の藤子不二雄ワールドが…

【2636冊目】モーリヤック『テレーズ・デスケイルゥ』

テレーズ・デスケイルゥ(新潮文庫)作者:モーリヤック新潮社Amazon テレーズの夫ベルナールは、暴力を振るうわけでも、酒やギャンブルにハマっているわけでも、浮気しているわけでもない。まあ、世間一般でいえば、「良い夫」ということになるのだろう。と…