hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2663冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』

アンソニーホロヴィッツの名を知らしめた一冊にして、前代未聞の「ダブル・ミステリ」。


現代のロンドンで、編集者の「わたし」が作家アラン・コンウェイの最新作『カササギ殺人事件』の原稿を読むところから、この本は始まる。そして、読者はいきなり、作中作である『カササギ殺人事件』の中に入っていく。そこは1946年のイギリスの片田舎であり、名探偵アティカス・ピュントが活躍する、由緒正しき古典派本格ミステリの世界なのだ(本書ではご丁寧にも、作中作の冒頭に「扉」ページを設けている。創元推理文庫おなじみのカギをあしらった二重枠デザインだ。ただし、カギはナイフに変わっているが)。


そこから上巻まるごと、読者は作中作の世界で謎解きに熱中することになる。上巻の最後の1行に驚愕した読者は、すぐに下巻を手に取らずにはいられなくなるだろう。そして下巻の最初のページを開いた瞬間、読者は、先ほどとは比べ物にならない衝撃に見舞われることになる。


下巻は、編集者が探偵役のいかにも現代ミステリの世界。そこでは作中作に込められた意外な謎が読み解かれ、殺人事件とミステリをめぐる議論が交わされ、著者の熱い「ミステリ愛」と「アガサ・クリスティへのリスペクト」が随所に感じられる。そして驚きの結末。これも詳しくは書けないが、いかにも現代ミステリ的な展開だ。一方、作中作のほうの『カササギ殺人事件』では、名探偵アティカス・ピュントが、関係者を前に昔ながらの謎解きを披露するのである。


まあ、何を書いてもネタバレになりそうなので、このへんにしておこう。個人的には、二つのミステリを交差させた複雑きわまりないプロットより、それを読者にスッと理解させる明快なリーダビリティのほうに、著者の作家としての凄みを感じた。ちなみに本書には、ホロヴィッツの「作家としての技術」を体感できるくだりもある(下巻p.242〜)。作家志望者は必読だ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!