自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2644冊目】西原理恵子『まあじゃんほうろうき』



私の西原理恵子デビューはこの漫画でした。その後もいろいろ読んできましたが、今読み直してみると、いろんな意味で、西原理恵子のエッセンスが全部詰まったマンガだと思います。


絵柄にしても、初期の純朴な絵柄から比べると、最後の方はかなり上手くなっているし、自分のスタイルみたいなものがハッキリ出ています。最後の方の抒情的でありながら破壊的な作品は『ぼくんち』あたりに通じますし、キャラクターの造型力や特徴の捉え方は『毎日かあさん』あたりにも生きているように思いました。


前半の宇佐美編集長や桜井章一に絡んでいるところも面白いですが、なんといっても後半がスゴイです。銀玉親方やサラリーマンMさんといった超プロ級の連中に、とにかくガンガンカモられる。手持ちのお金が足りなくて朝までの延長戦になり、8万円の負けが23万円になる。温泉旅行では2泊3日の麻雀三昧で40万円。麻雀をやってなければ「もしかしたら、家が買えたね」というのは、たぶん本当のことでしょう。


でも、なんでそんなに鼻血をぶしぶし出すほど負けまくって、それでも麻雀を続けたのでしょう。最終回ではその理由を「たのしかったからです」「みんなとあそんでもらえて、とてもうれしかったからです」と書いています。なんだかとても当たり前で、とてもせつない答えだなあ、と思います。


でも、これってなんとなく分かる気がするんですよね。確かにかしこく振る舞って、車や家が買えた方が、「まっとうな」生き方なのかもしれません。でも、そんな人生、本当に楽しいでしょうか。それよりも、何十万円負けようと、みんなと一緒に楽しく麻雀やってたほうが、負けることも含めて、楽しく生きているんじゃないでしょうかね。


まあ、そのリクツでいくと、6億円の借金があるというすえいどんが一番の「勝者」ということになるのかもしれませんけど。いずれにしても、これほど「元手」のかかった作品はそうはありません。でも、その「元手」は、本作だけではなくて、西原理恵子のすべての作品に活きているような気がします。西原理恵子という漫画家は、この『まあじゃんほうろうき』によって生まれたのです。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!