hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2651冊目】デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』


コロナ禍で注目された人々といえば「エッセンシャル・ワーカー」でしょう。医療従事者、介護職員、ごみ収集員、トラックドライバーなど、社会機能の維持に不可欠な人々のことです。


特に医療関係者に対しては、心ない差別もありましたが、ネット上には「医療従事者に感謝を」というメッセージがあふれました。自衛隊ブルーインパルスを飛ばしたこともありましたね。


ところが、それほど「感謝」され、「評価」されながら、どうやら彼らの給料はほとんど(あるいは、まったく)上がっていないようなのです。ブルーインパルスを飛ばすカネがあるなら、彼らの給料を少しでも上げるほうに回したほうが良さそうなものなのに。というか、そもそも、エッセンシャルワーカーの給料は極めて低いことが多いのです。例外は医師などごく一部のエリート層くらいでしょう。


社会に必要な人々の多くが、生活ギリギリの低賃金労働を強いられている一方、奇妙な現象が起きています。ホワイトカラーの、ほとんど仕事らしい仕事もしないで高給をもらっている人たちが増えているのです。一日中、仕事をしているフリをしつつSNSをやったり、ある部署からのメールを別の部署に転送するだけの仕事をしている人たちが、看護師やヘルパーの年収の数倍から数十倍を稼いでいる。それも、日本だけではなく世界中で。いったい何が起きているのでしょうか。


著者はこうした「自他共に認めるクソ仕事」を「ブルシット・ジョブ」と呼びます。その定義は「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態」であること。思い当たる節がある人も多いのではないでしょうか。ちなみにイギリスの調査では、自分の仕事が世の中に貢献していないと感じる人が、労働者の37%に達しているとのこと。日本でも、おそらく同じくらい(あるいはもっと多く)の人が、同じような回答をするのではないでしょうか。


しかし、不思議なのは、自由主義と資本主義の時代になぜこんな奇妙な現象が起きるのか、ということです。端的に言えば、仕事をしていないホワイトカラー労働者を高給で雇うくらいなら、現場で働くいわゆるブルーカラー労働者、特にエッセンシャル・ワーカーの給料を上げたほうが、誰が考えても良いはずです。しかし、実際にはそうなっていない。なぜでしょうか。


その答えは本書で明らかにされていますが、簡単にまとめられる内容ではないので、ぜひ本書をあたってほしいと思います。ただ、一つ言えるのは、この状態は誰にとっても不幸であるということです。低賃金でハードワークを強いられる人々も不幸だし、高い金はもらっていても一日中オフィスでやることがない人もまた、長く続けることで精神が蝕まれていきます。人間は、穴を掘って、また埋め戻すような仕事を、長く続けられないようにできているのです。


本書は、資本主義が生み出したこのような矛盾を初めて発見し、可視化し、問題提起したという意味で、歴史に残る名著になると思います。全労働者必読の一冊です。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!