自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2655冊目】ニコ・ニコルソン、佐藤眞一『マンガ認知症』

マンガだからといって、あなどってはいけません。この本はすばらしい。特に、認知症の家族を介護している方は必読です。


なぜ、同じことを何度も聞くのか。なぜ、夕方になると「家に帰る」と言って外出しようとするのか。なぜ、お金が盗まれたと思い込んで怒り出すのか・・・・・・。認知症にまつわる「なぜ」は、家族にとっては辛いことばかり。認知症になる前を知っていればいるほど、なかなかその変化を受け入れることは難しいことと思います。


本書はそうした「認知症あるある」をひとつひとつ取り上げて、認知症の当事者の視点から、わかりやすくその意味を明らかにしてくれます。え? 意味がわかったって、介護の大変さには変わりないでしょ、って? いやいや、「サトー先生」は言っています。「知ることで、介護が楽になる」って。それに、本書では理由だけでなく、具体的な「対処法」にもきちんと言及してくれています。


中でも「ケアとコントロールの違い」のくだりは印象的でした。ケアはどうしても、自分が「ケアする側」、相手は「ケアされる側」と、立場を分断してしまいます。そして、一方的に「与える側」を続けていると、だんだん相手を「思い通りにしよう」と考えるようになる。そうなると、もはやこれは「ケア」ではなく「コントロール」になってしまいます。


だから、洗濯たたみでも編み物でもなんでもいいので、少しでも何かを「返してもらう」ことが大事になってくるのですね。それによって、自分と相手の立場のバランスが少しだけでも回復するからです。「昔のことを教えてもらう」「自慢の料理を教えてもらう」なども良さそうですね。それは相手のためというより、介護する自分のためなのです。


確かに、介護はラクじゃありません。でも、ちょっとしたコツを知り、相手が何を考えているかを察し、そして介護サービスをうまく使うことで、少しだけでもその負担を減らすことができるはずです。そのための入り口として、介護に悩んでいる人こそ、この本を手に取ってほしいと心から思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!