自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2656冊目】萩原秀三郎『目でみる民俗神 山と森の神』


今の日本でもっとも見えづらくなっているのは、この本に載っている写真のようなことではないか。そう思いながら読み、眺めていた。


著者が写真に撮り、本書に収めたのは、日本各地で行われているさまざまな祭りや神事の様子である。いや、「行われて」いたのは本書が刊行された昭和63年以前のことで、今もそれが続いているかどうかはわからない。過疎化や担い手不足で失われてしまったものも多いのではないか。


日本の共同体は、山や森とつながっていた。神は春、山からやってきて、さまざまな実りをもたらし、冬は山に籠るのが常であった。日本の神は里に訪れる「マレビト」であったのだ。だから、たとえば収穫を祝う祭りは、神に収穫物を供え、共に食するという形態をとった。


人が山に入ることもある。狩猟民は、獲物の一部を捧げることで神への感謝をあらわした。頭部、心臓、尾などが捧げられることが多かったようだ。成人になると山に入るという儀式がある地域もあった。それは神へのお披露目であり、ある種のイニシエーションでもあったのだろう。


本書の著者、萩原秀三郎は写真家だ。だが、写真を通した洞察の鋭さと深さは相当のもの。日本の信仰と習俗のルーツを中国南部の少数民族や東南アジアに求める冒頭の考察「表層文化と基層文化」は、それだけで日本民俗学の基本的な視点を提供するものになっている。


このシリーズは今後「豊穣の神と家の神」「境と辻の神」と続くらしい。いずれも古書でしか手に入らないと思われるが、日本人なら見ておくべきシリーズだろう。いずれどこかの出版社で再版してくれないだろうか。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!