自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2653冊目】乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

「必ず2回読みたくなる」との触れ込みは、ダテではありません。確かにこれは、2回読まなければ見えてこない、驚きの仕掛けが隠された小説です。


いや、隠された、というのは正確ではありませんね。むしろ、本格推理小説のように、手がかりはすべて明示されています。後から考えてみると、わずかにひっかかりを感じていたところもありました。でも、この「真相」には、ラスト2行を読むまで気付けませんでした。


だからといって「叙述トリックのミステリー」ではありません。むしろ純然たる恋愛小説なのです。それがこの小説はユニークです。叙述トリックを仕掛けることで、初めてこの「恋愛小説」は完成するのです。


散りばめられた膨大な「80年代ガジェット」については、私はあの時代は小学生だったので、ピンとこないものも多いですが、それでも「男女七人夏物語」に「富士通オアシス」、「クイズダービー」に「国電の民営化」などは懐かしさを感じます。それになんといっても「テレホンカードの残りカウントを気にしながらの電話」や「クリスマスは高級ディナーにホテル」といった恋愛の定番ネタが決定的ですね。そうなんですよ。普通、1ヶ月前にイブのホテルなんて予約できなかったんですよ、あの頃は。


ということで、80年代の恋愛や青春を思い出したい人、思い切り騙されてみたい人にはオススメの一冊です。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!