【2802冊目】深沢潮『海を抱いて月に眠る』
「在日文学」という言い方は大雑把すぎてあまり好きじゃないが、こういう本を読むと、やはりこれは「在日文学」という表現が一番ふさわしいと思えてくる。
頑固で横暴なだけと思っていた父の意外な過去を知り、父の内面に向き合っていく梨愛。その歴史は、まさに韓国が辿ってきた苦難の道のりそのものだった。そして、父の人生を通じて、梨愛は朝鮮戦争、朴正煕のクーデター、金大中の拉致事件などに翻弄され続けてきた在日一世の歴史を知るのである。
そうした苦難の歴史は非常に読み応えがあったが、それにしても父親は不器用すぎだろ、とも思えてならない。特に妻の容淑への態度はひどく、まあそりゃ誤解もされるわな、としか思えなかった。それが歴史のせいなのか、それとも元々の気質なのかはわからないが。容淑のほうもそれでどんどん頑なになってしまい、すれ違いがすれ違いを生むあたりは、韓国も日本も変わらない。私も気をつけなければ。
最後までお読みいただき,ありがとうございました!
#読書 #読了