【2775冊目】町田そのこ『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン98冊目。
フェロモン全開でファンクラブまである超個性的な店長がいるコンビニ「テンダネス門司港こがね村店」が舞台の連作短篇集・・・・・・と言って、食指が動く人がどれくらいいるでしょうか。私も正直「新潮文庫の100冊」に入っていなければ、手に取ることはなかったかもしれません。
でも、この小説はとてもいい。コミカルですが人の人情の機微に触れるものがあり、短いながらそれぞれの登場人物のドラマがあります。女子高生、30代のパート主婦、中年男性、定年を迎えた初老の男性など、登場人物の年代も幅広いので、誰かしらには共感できるのではないでしょうか(私にとって一番「沁みた」のは、漫画家の夢をあきらめた40代の塾講師が主人公の第2章「希望のコンビニコーヒー」でした。
それにしても、コンビニを舞台にした作品に最近続けて出会っていますが、どれもそれぞれにクオリティが高くて驚きます(とはいっても、本書のほかは村田沙耶香『コンビニ人間』と佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』くらいですが)。コンビニという一見無機的で無個性に見える場所を舞台に、個性的でアグレッシブな名作が生まれているのは、ある意味今の日本を象徴しているような気がします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!