【2793冊目】しりあがり寿『方舟』
降り続く雨。
水位は次第に上昇し、
家が、ビルが、人が、
少しずつ水に沈んでいく。
不安を直視できず、バカ騒ぎを続けるテレビ。
棒読みの「公式発表」を繰り返す政府。
そんな中、突然出現する「方舟」。
ハミガキのキャンペーンのために作られた舟に、大勢の人が殺到する。
しかし、食べ物も水もなく、
舟の上にいる人たちもまた、次々に死んでいくのだ。
聖書に描かれたノアの方舟は、
信心深いノアの家族を救うが、
しりあがり寿の描く終末では、誰も救われない。
長い雨がやみ、
死体が転がる舟の上に、広がる星空。
水底のビル街を漂う、人々のむくろ。
未来が失われた人類のために描かれた、とびきり美しい終末の光景を描いたのだと、
しりあがり寿は、本書の「あとがき」で書いている。
さよなら、人類。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!