hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2754冊目】乃南アサ『しゃぼん玉』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン76冊目。


親から愛されず育ち、何をやっても長続きせず、ひったくりで生活している翔人が、ひょんなことから山深い村で老婆の世話になり、人間性を取り戻していく・・・という、あらすじだけ読むと、なんともベタな物語ですが、これが実に良い小説で驚きました。特に翔人が村に戻っていくラストには、小説では滅多に泣かない私がうるっときてしまいました。


翔人は、村で厳しく叱られたり、指導されたわけではありません(「シゲ爺」には叱られたり、はたかれたりしてましたが)。手作りのおいしい食事、「ぼうは、良い子」と頭をなでてくれる老婆、こき使いながらも温かく迎え入れてくれる村人たちが、ゆっくりと翔人を変えていったのです。


そこで出会ったものは、どれもそれまでの、誰からも褒められず、認められず、インスタントラーメンやコンビニ弁当ばかり食べて、すさんだ生活を送っていた翔人の人生にはないものばかりでした。いわば翔人は、そこで生き直す機会を与えられたのです。そして、通り魔にあって田舎に戻ってきたという女性、美知と出会って、自らの罪ともまた向き合うことに・・・・・・。


いやあ、これは若い頃に読んでおきたかったですね。その後の人生が変わった気がします。「しゃぼん玉」というタイトルも絶妙ですね。まさに翔人は、あっちこっちをフラフラして、いつ割れてもおかしくないしゃぼん玉のような存在だったのですから。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!