自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2723冊目】ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン45冊目。


父王の亡霊が登場する冒頭のシーンから、いくつもの死体が転がる壮絶なラストまで、圧倒的な密度と緊張感に満ちた復讐譚。シェイクスピア悲劇の最高傑作のひとつであります、


佯狂、という言葉があります。狂人のふりをすることですが、本書のハムレットは、まさにこの佯狂に見えます。でも、読んでいくうちに、だんだんわからなくなってくるのですね。実はハムレットは、本当に狂っているのではないか? 復讐のため、狂うふりをしているうちに、実際に狂気に取り憑かれてしまったのではないか? と。


それほどまでに、ハムレットの言動は異様です。しかし、その言動が予想外の悲劇を次々に引き起こし、ハムレット自身をも巻き込んでいくところに、シェイクスピア作劇術の真骨頂があるのではないでしょうか。


それにしても、読むたびに思うのですが、この復讐は本当に成功だったのでしょうか。どうもハムレットは、あせりのあまり感情に身を任せ、自滅したようにしか思えません。まあ、だからこその悲劇、ということなのでしょうが、そのために結局は、ハムレット父子はデンマークの王権そのものを失うことになってしまうのですから。亡霊となった父王は、こんな結果を本当に望んでいたのでしょうか。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!