【2767・2768冊目】芦沢央『許されようとは思いません』『火のないところに煙は』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン89•90冊目。
100冊中に複数作品がエントリーされていたのは、芦沢央のほかには重松清だけ。その割に名前くらいしか知らなかったので、興味津々で読んでみた。
いずれも短篇集なのだが、『許されようとは思いません』は意外な結末が魅力のミステリ仕立て。絶妙なシチュエーションと心理描写の巧さがとにかく際立っている。「目撃者はいなかった」の営業マンが、ミスを隠蔽しようとするうちにどんどん追い込まれていくさまは、自分のことのように胃が痛くなるし、「姉のように」で愛しているはずの自分の娘の虐待へと心理的に追い込まれていく主人公のほうは、読むだけで胸が痛くてたまらない。ラストの切れ味では「ありがとう、ばあば」が見事だけど、こないだ読んだ『儚い羊たちの祝宴』の中の某作品と着想が似ているのは偶然・・・でしょう。
『火のないところに煙は』も短編だが、こちらは連作短編、しかもホラーだ。いずれも不気味な話ながら、ラストで全ての話が一挙につながる瞬間は鳥肌モノ。しかもこの作品、「著者が小説新潮に掲載した怪談を読んだ読者から連絡があって、さらなる怪異を教えてもらう」というスタイルで話がつながっていくメタ小説なのである。著者自身が実際に見たり聞いたりした話、というところがいかにもリアルで、怪談という仕立てに合っている。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!