hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2765冊目】津村記久子『この世にたやすい仕事はない』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン87冊目。


ちょっと風変わりな「お仕事小説」。風変わり、というのは、お仕事小説の多くは「一つの仕事を通じて人間が成長していく」プロセスを描くが、本書は、一人の女性がいろんな仕事を転々としていく連作短編なのだ。しかもその仕事が、どれも、どこか変わっている。


ある小説家をひたすら監視。バスの広告アナウンスの原稿づくり。菓子袋の裏のプチ情報作成。ポスターの貼り替え。そして最後は、広大な森林公園にある小屋でひたすらチケットにミシン目を入れるという、ほとんどコナン・ドイルの「赤髪連盟」レベルの退屈仕事。


ところが、やってみるとどんな仕事にもそれなりの奥深さがあり、苦労があり、楽しみがあることがわかってくる。ここがこの小説のキモであって、実は本書は、ある仕事で燃え尽きた主人公が他の仕事を通じて自分自身を取り戻し、回復するプロセスを描いた小説でもあるのだ。


独特の文章でとぼけた雰囲気だが、実はかなりシリアスに仕事と人生の本質に迫っている。テーマはいささか地味だが、なかなかに味のある小説だ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!