【2770冊目】瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン92冊目。
中学駅伝に挑む6人を主人公とした作品です。
いい作品でした。まず構成がいい。1区から6区まで、それぞれの区間の走者を語り手に、同じ時間に起きた出来事を6通りに語ります。だから、同じ出来事でもまったく違う捉え方になるし、周囲からの見え方と本人の思いが大きく違う、ということも。そして、どの章も駅伝のシーン、次の走者にタスキをつなぐシーンで終わるのです。
登場人物がいい。いじめられっ子の設楽、乱暴者の大田、気取り屋の渡部、盛り上げ役のジロー、素直な後輩の俊介、部長でリーダー役の桝井と、キャラが明確に描き分けられているだけでなく、その奥にある屈託や悩みを通して、6人それぞれのもつ深みも描かれています。語り手にはなっていませんが、陸上シロートの新顧問、上原もなかなかいいキャラです。
そして、タイトルがいいですね。「あと少し、もう少し」。駅伝そのものを表していて、同時に登場人物の生き方やありようをうまく表した名タイトルです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!