hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2781冊目】村田沙耶香『地球星人』


いや〜、いいですね〜。狂ってます。これまで読んできた村田作品の中でも、本書はかなりぶっちぎっています。リミッターが外れているというか、遠慮がないというか、容赦がないというか。


主人公の「私」は、小学生の頃は自分を魔法少女だと信じていたというのですが、まあ、その程度なら「夢見る年頃」にはよくあることです。でも、34歳にもなって、今度は「私は実はポハピピンポボピア星人」だ、なんて言い出したら、さすがにシャレになりません。


でも、「私」は大真面目なのです。しかも、「性交渉なし」の条件でネットを介して知り合った夫も、おそろしいことに同じ意見、同じ思考の持ち主。彼ら夫婦にしてみれば、周囲の「地球星人」こそ異常、ということになるのです。


彼らによれば、地球星人たちは、ぎっしりと並んだ「人間工場」のなかで、オスとメスのつがいとなって生活し、子供を育てています。この工場から「出荷」された地球星人に求められるのは「世界の道具になって他の人間から貨幣をもらい、エサを買う」ことと「つがいになって、巣に籠って子作りをする」こと。「私」の子宮はこの工場の部品で、やはり工場の部品である誰かの精巣と連結し、子供を製造するのです。


ええと、ここまでは大丈夫でしょうか。このあたりですでについていけない人は、この先を読まずに本を閉じられますから、ある意味幸せかもしれません。でも、私は「こういう考え方もアリかな」と思ってしまったんですよね。思考実験として考えれば、ある意味、真実を突いてるよね、と。


問題は、「私」にとって、これがただの思考実験ではないということです。繰り返しになりますが、「私」は大真面目なのであります。その証拠に、「私」とその夫、そしていとこの由宇は、こうした「地球星人」の洗脳を逃れ、いつかポハピピンポボピア星に帰る日のために、3人でおそるべき共同生活を始めるのです。


この作品はある意味、村田沙耶香の極北です。読み手はその思考にどこまでついていけるかを、徹底的に試されます。世間のウソを暴く筆致に快哉を叫んでいたはずが、気がつくと自分自身が試され、暴かれ、解体されているのです。


いやはや、村田沙耶香は「怖い」。ナメていたわけじゃありませんが、これを読むと『コンビニ人間』などは相当マイルドだったことに気付かされます。この作品に芥川賞が贈呈されていれば、芥川賞もホンモノ、ということになるんですけどね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!