【2758冊目】小川糸『あつあつを召し上がれ』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン80冊目。
実ははじめての小川糸作品。前から気になっていた作家さんではあったのですが。
短篇集です。どの作品も、食べ物が登場し、重要な役割を演じています。
味や香りの記憶は、人を過去に引き戻したり、失った人を思い出させてくれます。父親が愛してやまなかった中華屋のぶたばら飯。母が作り方を教えてくれた味噌汁。記憶の中にだけ息づくコロッケ、いや「ハートコロリット」。
一番良かったのは「季節はずれのきりたんぽ」でした。亡き父がこだわったきりたんぽを再現しようとする母と娘。料理を作るうちに生き生きと蘇る、父の記憶。そこにいないはずなのに、きりたんぽを通じて思い出す父の存在感の大きさ。思いがけないラストも、これはこれで味があって良いものです。
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