hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2771冊目】住野よる『か「 」く「  」し「 」ご「 」と「 』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン93冊目。


高校生5人が主人公の連作短編です。章ごとに語り手が変わります。変わっているのは、それぞれが相手の心の中を覗ける特殊能力をもっていること。その内容は、喜怒哀楽がトランプのマークの形で見えたり、数字で見えたり、気持ちの向きが矢印で見えたり、とさまざまです。


ただ、この能力以外の点では、本書は仲良し5人組の気持ちの交錯を描いた、ふつうの青春小説です。むしろこの小説のトーンからすれば、能力は果たして必要なものだったのか、よくわかりません。著者は、人の感情が分かってしまうことの困難を描きたかったのでしょうか。それとも、人の感情がわからないことのほうを描きたかったのでしょうか。


最初にこの小説を読めば、もっと素直に楽しめたのかもしれません。でも、章ごとに語り手が入れ替わることで見えてくるものの豊かさは、残念ながらこないだ読んだ瀬尾まいこのほうが上手です。高校生の感情と感性の微妙なエッジを描くのであれば、綿谷りさのほうがずっと鋭いものがあります。なんだかそんなことが頭をチラついてしまって、すんなり入ることができませんでした。


あ、本書のもうひとつの特徴は、どの章にもちょっとした謎かけがあって、それが物語に彩りを添えている点です。特に最初の章の「トリック」は鮮やかでした。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!