自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2631冊目】ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『アーヤと魔女』


宮崎吾郎監督のジブリ最新作の原作。この間アニメを観て、原作はどうなっているんだろう、と気になって読んでみた。ちなみにダイアナ・ウィン・ジョーンズの生前に出版された最後の作品でもあるらしい。


読んでみて、ある意味で意外だったのが、とても原作に忠実にアニメが作られていること。もちろんいろいろアレンジはされているが、アーヤのキャラクターや物語の展開といった基本的な部分はほぼそのまま。あ、ラストシーンはジブリ版のほうがよかったと思いますよ。


アーヤの名前は「アーヤ・ツール」、つまり「操る」という意味である。実際、アーヤは人に取り入って、自分の思い通りにコントロールすることが得意。正面からぶつかったり、取引をもちかけたり、時には策略を使ったりして、人の気持ちをうまく動かす。アーヤは、実にしたたかで、メンタルの強い女の子なのだ。


このあたりの「ずる賢さ」は、アニメ版ではややマイルドになっているが、それでも今までのジブリ作品みたいな「純朴でかわいい」女の子キャラとは一線を画している。だが、それは自立した大人の人間としては、むしろ当たり前のこと。アーヤは少女ではあるが、魔女の下働きをする代わりに魔法を覚えるという「取り引き」を踏まえて魔女の家で働いているのだから、むしろ少女少女しているほうがおかしいのだ。


ちなみにアーヤは英語ではearwig、つまり「ハサミムシ」。ハサミムシは耳から脳の中に入って人を操るという言い伝えからきているらしいが、さすがにこれはそのまま日本語にはできないねえ。「アーヤ」という、元の意味を残しつつ女の子の名前にしたのは、訳者さんのみごとなファインプレイだった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!