【2621冊目】せなけいこ『ねないこはわたし』
『ねないこ だれだ』でおなじみの絵本作家、せなけいこさんの自伝的作品です。おなじみの切り絵もたくさん登場して、見ているだけてたのしい一冊になっています。
せなさんの最初の絵本は、自分の子どもににんじんを食べさせようとして作ったものでした。
最初から切り絵の絵本だったようです。でも、新しい紙はもったいないから、ポスターの裏を台紙に使い、デパートの包装紙やチラシ、画用紙の切れ端を使いました。それが出版社の人の目にとまり、出版されることになったそうです。
せなさんはデビュー後も、ご自身の絵本に、包み紙や封筒の裏を使い続けます。『ねないこだれだ』の女の子のパジャマは封筒の裏だし、『めがねうさぎ』のうさぎの服はお店の包み紙だそう。だからこそせなさんの作品は、どこか懐かしく、あたたかいのかもしれません。
ただし、せなさんの絵本は「きれいごと」だけでは終わりません。「かわいくまとまっている本」ではないものが、せなさんは作りたかったそうです。なぜって、それは子どもにとって「本当じゃない」から。泣いたり怒ったり困ったりするのが、子どもだから。
そのあたりのことが直感的に伝わるから、子どもたちは、せなさんの絵本を喜ぶのかもしれませんね。
『ねないこだれだ』のラスト、女の子がおばけになって飛んでいくところだって、せなさんはしつけのために書いたわけじゃなかったそうです。本書には、こう書いてありました。
「こどもはおばけが大好き。
『おばけに なって とんでいけ』
って言われたら
『いいよ、とんでいくよ』
って言う子もいる」
たしかに、子どもはおばけが大好きです。その理由は、おばけは「かわいいけど、こわい」「こわいけど、かわいい」から。かわいいだけじゃない、そこが良いんですね。
いろんなところにおばけがいた、そんな日々のことを忘れてしまった大人たちにこそ、この本を読んでほしいと思います。