【2633冊目】村田沙耶香『ハコブネ』
19歳の里帆は、男性とのセックスが辛く、自分の性はなんなのかわからなくなってしまっている。男友達の前では「女を捨てた」ように振る舞うが、男装をしてみてもピンとくるものがなく、なんだか違うものを感じる。
自分の性について「悩む」のが里帆であるのに対して、すでにそんな段階をはるかに超えてぶっ飛んでいるのが「知佳子」である。知佳子は、そもそも自分が人間であるという自覚さえ持てず、小石か星のかけらのようなものだと感じている。彼女にとって、社会生活とは子どもの頃に砂場でやっていた「おままごと」のようなもの。家族の晩御飯がただの泥団子なのに、気づかずにみんなで遊んでいるような気持ちで、知佳子は月曜日から金曜日までを過ごす。
「東京と呼ばれていた場所も、全て、ただのアース(※地球のこと)の表面になる。朝と夜も消えてなくなり、ただの恒星とそれに照らされる惑星へ、永遠に続く宇宙の時間へと、皆、帰って行くのだ」(p.66)
本書にはもうひとり、美人ではあるが「普通の」女性である椿が登場する。本書は、普通人である「椿」、ちょっと変わっていて、そのことに悩んでいる「里帆」、むちゃくちゃ変わっていて、悩みすら超越している「知佳子」の物語なのである。
なので、読んでいると、最初は里帆の性別違和の悩みに焦点があたっているのだが、だんだん知佳子のぶっ飛び方のほうに惹かれ、なんだか地球上の悩みだの問題だのがどうでもよくなってくるのが面白い。
特に度肝を抜かれたのは、知佳子の「アース(地球)とのセックス」のシーン! いったいどこをどうすれば、こんな変態シーンを考えつくのだろう。いやあ、びっくりした。
教訓。
中途半端な変人になるくらいなら、ぶっちぎりの変人になれ!
以上!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!