自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2630冊目】田房永子『母がしんどい』


いや〜、これは読んででしんどかった。つらかった。


母親に、思いつきのようにピアノやバレエに通わされる。貯めていたお年玉は10万円の電子ピアノに使われ、弾かないと「せっかく買ったのに・・・ほんとものを大切にしないよね」。バレエはせっかく楽しくなってきたのに、塾に行くからと、今度は一方的にやめさせられる。その理由は常に「あなたのため」。


バイトもやめさせられ、友達には勝手に連絡をとり、職場にまでケンカの電話をかけてくる。タチが悪いのは、母親は表向きは人当たりよく明るいため、周囲に訴えてもわかってもらえないこと。むしろ「あんないいお母さんなのに」「文句をいうアンタが悪い」と言われてしまう。


怖いのは、小さな頃からそういう母親に育てられ、周囲もそれを認めるような言い方をするので、自分でもそれが当然、と思い込んでしまうことだ。そういう人の多くは、本書の著者がそうだったように、仮に母から逃れたとしても、同じように支配的な人を恋人や結婚相手に選んでしまうか、あるいは自分自身が母と同じような人間になってしまう。


これは「呪い」である。呪縛である。それを解き放つのは、並大抵のことではない。著者にとってキッカケとなったのは、とてもいい精神科医に出会い、そこで「あなたはとんでもない親からとんでもない育てられ方をしたんです」「一人で戦ってきてえらかったと思うよ」と言ってもらえたことだった。クスリばっかり処方してロクに話も聞かない精神科医が多い中で、この出会いはほんとうに幸運だったと思う。


人によっては、この本が自分を解放するキッカケになるかもしれない。自分の育てられ方って何かおかしいんじゃないか、と感じている人、どうすれば毒親の支配から逃れられるのか知りたい人は、ぜひ読んでみることを勧めたい。


人には幸せになる権利がある。自分の人生を自分で決めることができる。


毒親なんかに、それを邪魔されてたまるものか。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!