hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2628冊目】小林快次『恐竜まみれ』


表紙はポップだが、内容はなかなかハード。文字通り「命がけ」の恐竜発掘現場の大変さと楽しさ、恐竜研究の醍醐味をガッツリ伝えてくれる一冊だ。


著者の名前は初めて拝見したが、日本の恐竜研究の世界では有名な方らしい。その活動現場はアラスカやゴビ砂漠など、世界の超・辺境ばかり。それも当然のことで、新しい恐竜の化石を見つけようと思ったら、人がいない場所にいくしかないのである。


炎天下の砂漠を延々と歩き、グリズリーやガラガラヘビに遭遇し、突然の大雨で周囲は濁流と化す。しかし、そんな環境にこそ、化石というお宝は眠っているのである。恐竜の歯や卵の殻のカケラなど、わずかな手掛かりから推理を働かせ、近くに眠っている巨大恐竜の全体骨格を掘り出す。特に頭部を発見する瞬間の興奮は、読んでいても身震いが出るほどだ。それはもちろん、その前に、何時間にも、場合によっては何年にもわたる発掘作業があるからだ(1回あたりの滞在期間がビザで決められているため、短期間の調査を何年も繰り返すのである)。


恐竜研究者ならではの「マナー」も興味深い。例えば、発掘した化石はアラスカだろうとモンゴルだろうと、現地の研究施設に運び、決して持ち帰らないという。それは、バラバラにしてしまうと研究価値が下がる、ということもあるだろうが(販売目的の盗掘者はそれをやってしまうため、恐竜の全体像がわからなくなってしまう)、なんといっても大事なのは「現地の研究者を育てる」ことなのだという。恐竜研究は競争でもあるが、同時にチームプレーであり、世代を超えた研究者育成の日々でもあるのである。