自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2618冊目】伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』


「陽気なギャング」3作目。なんと前作から9年ぶりの新作とのことですが、テンポや雰囲気は前作そのまま。おなじみの銀行強盗シーンから始まるのは、一瞬で読者を作品世界に引き戻そうという著者の作戦でしょうか。


今回の「敵役」は火尻という記者なのですが、これがまあシリーズ中最悪といっていいくらいの「嫌な奴」なんですね。記者という身分を使って、事件被害者のプライバシーを暴いたりして、大衆の下世話な関心を煽っている。まあ、今の週刊誌やスポーツ新聞の連中の悪い部分を濃縮したようなキャラなんです。


こいつをどうやっつけるか、というのが本作のメインプロットなのですが、そこは伊坂幸太郎、無数の伏線を張り巡らせて一挙に回収するといういつもの手際で、鮮やかなラストを迎えさせてくれます。タイトルの意味もそこではじめて了解できるというわけで、いやあ、実にエレガントですね。


次回作が出るのかどうかわかりませんが、願わくば、また成瀬や久遠らに会いたいものです。