【2620冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』
『メインテーマは殺人』に続く、元刑事ホーソーンが探偵役の推理小説。そう、この本は「ミステリ」ではなく「推理小説」という古式ゆかしい呼び名がふさわしい。
すべての手がかりを明確に読者の前に並べてみせる、徹底したフェアプレイ精神。前作同様、クリスティばりの鮮やかな「典型的」人物描写。王道の推理小説のパターンを踏破しつつ、なお新たな仕掛けを試みる独創性。いずれも完璧だ。
そして前作以上に、至るところに散りばめられた、シャーロック・ホームズへのオマージュ! 特にホーソーンの次のセリフには驚喜した。
「ありえないことを排除していけば、最後に残るのは、どんなに信じられないことであっても、それが真実なんですよ」(p.405)
同時代にコナン・ドイルやアガサ・クリスティがいたら、と思ったことはないだろうか。後世の人は、たぶんこう思うはずだ。「同時代にアンソニー・ホロヴィッツがいたらなあ!」
リアルタイムで新作が読める喜びをかみしめたい。