【2818冊目】凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』
1か月後に地球に小惑星が激突し、人類が絶滅する世界での物語。
似たような設定で思い出すのは伊坂幸太郎『終末のフール』だが、あちらは年単位の猶予があったので、どこか静かで達観した印象があった。
一方本書は、いきなり1か月後。なので、人々は自暴自棄になり、ほとんどの人は仕事などしなくなるので社会インフラは崩壊し、略奪と暴力と得体の知れない新興宗教が横行するバイオレンスな世紀末世界になっている。
そんな世界で生き抜こうとする「家族」の物語が、主人公を代えて第1章から第3章まで続き、最終章は突然、ある歌手の物語になる。もちろん彼らの物語は最後には交錯するのだけれど。
ひと月後の終末という異常な設定と、個々の人生の物語。一見そぐわなさそうな二つの要素が、意外にうまくブレンドされているのがおもしろい。特に目力信士、江那静香という二人の「大人」の存在が効いている。それぞれに虐待された過去を持ち、痛みを抱えて生きていて、それでも終末を前に、懸命に自分の人生と向き合おうとする。その姿に、最終章の歌手Locoこと山田路子の、別の意味で痛みと孤独に満ちた人生が響き合う。著者の小説ははじめて読んだが、なかなかの読み応えでありました。
最後までお読みいただき,ありがとうございました!
#読書 #読了