ライティングメソッドの本では、ありません。
文章作法の本とも、違います。
これは、もっと根源的な、「書く生活」あるいは「書く人生」の要諦を綴った本なのです。
久しく絶版でしたが、このたび、文庫サイズで復刊しました。
このサイズ、このページ数で1,540円は高いと思うかもしれませんが、そんなことはない。
本書は、「書く人」であれば、10倍の値段がついていたとしても、必ずや購入し、座右に置くべき本であります。
そのことは、本書を読めばすぐわかります。
自分の書いた文章の核となる部分が、その文章全体を弱めていると気づいた時は、どうするか。
本を書いていて行き詰まったと感じた時、それは何が原因で、どう対処すべきか。
何を書けばよいかわからなくなったときは、どこに題材を探し求めればよいか。
その答えは、すべてこの本に書いてあります。
でも、それだけじゃない。
本を読み、本を書くばかりの人生に、果たしてどのような意味があるのか。
そのことを、本書は著者の経験や、著者の暮らす自然豊かな環境の美しい描写とともに、生き生きとあなたに伝えてくれるのです。
中には
「ピストル自殺でもしたらどう? 実際、またもう一ついい加減な文章を世に送り出すくらいなら」(p.50)
とか、
「作家としての自由は、好き勝手なことをしゃべるという意味での表現の自由を意味しない。むしろ勝手なことを言ってはいけないのだ」(p.49)
さらには
「私の推量では、フルタイムの作家はだいたい平均五年に一作、本を書く。一年に七十三の使用可能なページ、すなわち一日一ページの五分の一、使用可能な文章を書く」(p.54)
などの言葉を読んで、厳しすぎると感じることもあるかもしれませんが、
それでも、本書は書くことが意義あることであり、人生を賭けるに足ることであると、力強く伝えてくれます。
「うまく行くとき、本を書くことは、天の賜物としか言いようがない。それはあなたに贈られる。ただし、あなたが求めれば、である。あなたは探し、胸をつぶし、背骨を折り、脳を破る。そこに至って初めて、それはあなたに贈られるのだ」(p.123)
では、最後に本書から得た私の座右の銘を。書くことだけではなく、思考と行動のすべてにおける、私の指針となった一文です。
「手を抜くな。すべてを厳密に容赦なく調べ上げるのだ。一つの芸術作品における細部を厳しく調べ、探すのだ。離れてはいけない。飛び越えてもいけない。わかったようなふりをしてはいけない。徹底して追及し、ついにそのもののもつ独自性と強さの神秘性のなかにその正体を見るまで追い詰めるのだ」(p.128)
いつかは、こんな書き手になりたいものだと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!