【2829冊目】松田行正『眼の冒険』
直線、面、形、文字。
ありとあらゆる視覚情報をこきまぜて、「見えること」と「見ること」の間隙を突く一冊です。
★★★
まずは「相似」の話から。
雑誌『遊』で展開された「似たもの同士カタログ」を紹介し、モンドリアンのアートとコンピューターの集積回路と曼荼羅図を重ねるのは、まだ序の口です。
相似は、文化や歴史でも重要です。
たとえば、縦ストライプの服。
日本でも西洋でも、当初は身分の低い者しか着用できませんでしたが、後に斬新なデザインとして人気となり、アメリカやフランスの国旗デザインにまでつながりました。
あるいは、ナチスの党大会で行われた光のモニュメントと、ニューヨークのワールドトレードセンター跡地で行われる追悼の光の儀式の相似性はどうでしょうか。
さらにナチスがらみで言えば、広島平和祈念資料館にみられるシンメトリーと、ナチス建築家シュペーアによるファシズム建築の相似性も指摘され、読んでいてギョッとさせられます。
★★★
さまざまな図表も興味深いものばかりです。
個人的に気になったのは、どちらも映画がらみですが、
1つは『遊星からの物体X』で、登場人物がエイリアンに乗っ取られるプロセスをダイアグラムにしたもの。
もう1つは、ヒッチコックの『ロープ』の探偵役が室内を歩き回ったルートをつなげたものが面白く感じました。
★★★
他にも錯視画からアート、独自の文字からCDのジャケットまで、とにかくデザインといえるものならなんでも取り上げられ、意外な仕方で結びつけられています。
ページをめくるごとに読み手の「モノの見え方」が更新される、まことに驚くべき一冊でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!